□春風駘蕩34
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ななこの頭に手を添え、柔らかい髪を指に絡ませる。


「たく、どうしてこうも手前ェは心配ばかりかけんだよ。仕事増やすんじゃねぇ」


「お前のこと待ってんだぞ…総悟だって、近藤さんだって…ななこがいないと屯所内が落ち着かねぇんだ」


こんなこと言っても届いてないとわかってる。

それでも話してたかった。


頬に触れると冷たい感触が伝わってきた。


医者に言われた言葉が頭の中を巡る。


「"このまま意識がない場合は…覚悟しておいて下さい"」


なに覚悟すんだよ。
ふざけんな。


こいつを発見したのは近くの港だった。
瀕死のななこは病院に搬送されるとすぐに白い服を纏った奴らに囲まれ奥へと消えた。


一命をとりとめたものの、未だに意識を取り戻さない。


このまま起きないわけじゃないんだろ?
もしそんなことするつもりなら切腹だ。


「今回の事件のせいで隊士どもまとめんの大変だったんだぞ」


あの、総悟でさえ動揺していた。

表情にはださないが、長年の付き合いだ。そのくらいわかる。



「…なんなんだよ…どうしてお前は……」



駄目だ…眠ぃ。


くそ、さすがに丸3日はキツいな。


ななこのベットに倒れるように突っ伏した。









『あ…ぅ、痛い』


身体に違和感がある。

あれ、右腕が動かないよ…


少し起き上がると誰かが私の腕を枕にして寝ていた。


『あのぅ…ちょっと引いてくれませんか?』


「……」


寝てる…


『あの、ちょっと』


「…あ?んだよ…うっせぇ」


『ごめんなさい、腕が痛いんです』


「腕?……って春風!!?おま、目ェ覚めたのか!?大丈夫なのかよ!!」


いきなりガバッと両肩を捕まれてユサユサと揺らす。

『わわわわ!!あの、ちょっと痛いです!』


「そうか、良かった…」



『あの、それで…あなたは、どなたでしょうか?』


「は…?」
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