□春風駘蕩36
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「ありがとうございましたー!!」


店員の元気のいい声に見送られ外に出た。

生ぬるい風を感じながら大きく背伸びをする。


『んー美味しかった!!』


お腹も膨れて少し眠い。


「ななこさんて意外と食べるんですね」


『え…あたしそんなに食べてる?』


10回くらいのおかわりは人並みだと思うんだけどな…


「ワタシの方が上ネ」


「お前に引けを取らない地球人がいたら見てみてーよ」


自慢げに膨れたお腹をポンポン叩く神楽に銀さんが鼻くそをつける。


『神楽がいるときは食べ放題じゃないと元取れないね…普通のレストランとかじゃなくてよかった』


こっちの方が安上がりで逆に助かる。


「いやななこさんもね」


「ななこ!!また奢ってヨ!!」


強く腕を引っ張られ、よろけそうになりながら、神楽を引き剥がす。


『バカ言うんじゃありません!!』


「ななこさん、ご馳走様でした」


『う、うん、それじゃまた』


やっぱり当分新八くんを直視できないかも。


ぅぅ…ごめんよ、お通ちゃんじゃなくて…


あの時の出来事を思い出すと頬が熱くなった。

それを誤魔化すように小さく咳をして、3人に背を向け、早々と自宅への道を歩く。


『あぁもう恥ずかしい!!』


真っ赤な顔を両手で隠しながら小走りに街を歩く。


「祇園精舎の金の声…」


『え、』


ヤバいと思った時には既に遅かった。


ぐいっと誰かにウエスト部分を両脇に抱えられると一瞬で屋根の上へと移動し、ものすごい速さで走っていく。


『ぎゃああああ!!だ、だ誰!?下ろしなさいぃぃ!!』


「それは無理な相談ね」


…女!?


見上げようにも首が曲がらない。


『ちょ!!おおお落ちるぅぅぅ!!』






「着いたわ」


ストンと地面に落とされる。


『うぅ…気持ち悪』


ジェットコースターのような感覚に吐き気がしそうになる。
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