□春風駘蕩38
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『あたし、これから念願の非番なんですぅ、あんたの暇に付き合ってられないの』


「ヘェ非番ねィ、じゃあデートしやしょう」


デート?


デートォォォオオ!?


『ななななに言ってっ!!』

「嘘でさァ」


『解剖したろーか』


「気分転換に外に連れてってやるってんだから、ほら」

そういって総悟は立ち上がり手を差し出した。


手を、繋げと?


いやいや、やだよ


「なに恥ずかしがってんでさァ、行きますぜィ」


『あっ!!ちょ』


パッとあたしの手を握るとそのまま屯所を抜け、街中へと繰り出す。


なんか、これ、デートだよね…


『総悟、どこ行くの?』


「呉服屋」


『呉服屋?…』


あぁそっか、あたしたち隊服のままだもんね。


こんな服じゃろくに遊べないってことかな?


連れてかれた呉服屋さんは、綺麗な女物の着物と男性用の着流しがディスプレイされている。


『へぇ可愛いね!!』


「適当に選びなせェ」


『うん』


いらっしゃいませと定員が笑顔で私たちを迎える。


適当に、ねぇ…


うーん、これも可愛いし、あれも可愛いしでなかなか…


「これにしな」


『え、』


いきなり後ろから総悟が私に着物を押し付けた。


淡い紫色がベースに菖蒲の花が描かれた着物はなんとも落ち着いた感じ。


『綺麗…』


「早く着て来なせィ」


『う、うん』


試着室に入って隊服を脱ぎ、総悟おすすめの着物に袖を通す。


なんかちょっと大人っぽいなぁ、いやいや、あたしだってもう社会人なんだしこういう着物も着こなせる女にならんと。


試着室からでると総悟が壁に寄り添って待っていた。

よく見たら総悟はすでに購入済みのようでちゃっかり茶色い着流しを着ている。

着流しも似合うなぁ、いつもは袴ってイメージがあるけど。


『お待たせ!』


「似合ってまさァ」


『え!!あ、ありがと』


「会計は済んでるんで、行きますぜィ」
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