小説 クロスオーバー(Fate・なのは・ネギま)

□第八話
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「えっとね。私の家系はね代々、小太刀二刀を使う剣術家だったの。私は習ってなかったけど、お兄ちゃんもお姉ちゃんもそれをお父さんに習ってたんだ。それでかな。士郎君についていくってことで、皆と別れることになった時、おとうさんから渡されたのがこの小太刀なの。」

 そう言って、右に持った小太刀をみせる。それはエヴァの目から見ても十分名刀と言えた。

「『八景』って言うんだ。この小太刀は、私にとってお父さんたちとの絆の証のような物なの。だからこの小太刀に恥じない使い手になりたかったんだ。…まあ、私って才能というか運動神経がないから、その道は結構遠そうなんだけどね。」


「………そうか。」

 少し寂しげな様子で話していたなのはだが、最後は苦笑いしながら答える。士郎はそのなのはの後ろでその様子に一見無表情だが、何とも言えない雰囲気を醸し出している。それらの様子にエヴァは暫く何も言わなかった。

「え、えっと、っあ!そ、そういえばエヴァちゃんは格闘技とかしているの?」

 そんな空気に責任を感じたのか、なのははやや不自然ながらも話を変える様に切り出した。

「ふむ、そうだなぁ…。」

 なのはのその気遣いを感じたのか、エヴァもそれに乗る。

「ほら、士郎。」

「ん?、なんだ今更そんな空の容器を渡されても困るんだが…。」

 エヴァは何を思ったのか手に持っていた空のドリンクを士郎に手渡そうとする。それに士郎は首をひねりながらも、ごみは捨てなければと素直に手をのばす。

 その瞬間。

 士郎の体が宙に浮いた。

「っえ?」

 なのはが呆けた声を思わずあげる。

 士郎も驚きながら、しかし、危なげなく着地する。

「合気。それもすさまじいレベルの…。」

「フッフフ。100年前に日本を訪れたときにもうな爺から教わったものだ。以来欠かさず鍛錬を積んできた。力が封印されてからは何かと重宝している。何事にも手は出すものだな。」

「すごい、エヴァちゃん!!」

「……というか、いきなり技をかけるなよ。」

 その手にいつの間に用意したのか、扇子を仰ぎながら、なのはの賞賛に自慢げな顔で受ける。当然、士郎の文句などスルーだ。

「何なら教えてやろうか?」

 そのなのはの反応に満足が言ったのか、そんな提案までする。

「えっ!本当?!」

「もちろん見返りは要求させてもらうがな。」

 真剣に悩み始めるなのはに面白そうにエヴァが付け足す。

「やめといたほうがいいぞ。なのは。」

 そのなのはの様子に呆れた顔で士郎が諭す。

「なんだ?士郎。弟子を取られるのが嫌なのか?」

 エヴァはそれに意地の悪そうな顔を見せる。

「いや。そうじゃない。俺も触りだけならやった事はあるが、たぶんなのはには無理だと思うぞ。形になるのに何年掛かるか。大体なのはは、俺以上に近接戦闘というか、まず運動神経がないんだ。」

「ん?そういえばさっき自分でも言っていたが、運動神経が悪いと言うのはどういうことだ?」

「そのままの意味だ。今はそうでもないが、昔は何もないところで転んだりボールを投げられれば顔面でキャッチをかますような運動神経をしていた。何故あの家族の血をひきながらこうなのか不思議でならなかったな。」

 士郎が懐かしそうに思い出すように言う彼の目にはなのはが小学校の体育の時間のドッチボールで、すずかのボールを顔面に思いっきりぶつけている姿が映っていた。なのはは気まずそうに視線を逸らす。

「………それでよく今まで戦えてこれたな?」

「なのはは運動神経こそないがこと魔法に関しては天才的だったからな。魔法で常に飛翔して戦うスタイルだったからあまり運動神経は関係なくすんだし、反射神経とかはあったから敵にすばやく対応できたからな。戦闘の才能事態は高かったしな。」

「ほう。そうなのか…。」

 そこでエヴァは何事か考え始めた。その様子に士郎達は首を傾げた。


「そろそろ休憩は終わりにして、とりあえず今日はこれから自主トレにするか。俺も久しぶりにこれの調子も見たいし。」

「私は別にいいよ。誘導弾の練習をしたかったし。でも今日は士郎君弓を使うの?いつもはシャドー相手にして剣とかを使ってるのに。」

 士郎の手にいつの間にか剣の代わりに握られている弓と矢を見てなのはは不思議そうに首を傾げる。

「ああ。最近はあんまり使ってなかったし、腕が落ちているってことはないだろうけど久しぶりに打ちたいっていうのもあるからな。」

 そこでふと考え事から抜け出しエヴァが顔を上げる。

「士郎は弓を使うのか?珍しいスタイルだな。それともそっちの世界ではメジャーなのか?それとその弓と矢どこから取り出した。」

 せいぜい弓の射程は一般人で精々60m前後。魔法を使えば確かにその距離は格段に飛距離は伸びるが狙いが難しく、狙いをつけ放つまでの動作の時間などから普通弓を好んで使うものはいない。そのことから怪訝そうに士郎を見る。その視線はいつの間にか握られていた弓にもいく。

「別に弓だけじゃなくていろいろな武器を使うけどな。なのはと俺がいた世界では、メジャーではなかったよ。まあ確かに基本弓で近距離戦闘は出来ないし、普通なら中々扱いづらいだろうしな。」

「ああそう言えば、武器を節操なしに使うとか貴様はさっき言っていたな。一つを極めようとは思わなかったのか?」

「節操なしって…。まあ、確かに一つに絞った方が普通はいいんだろうけどな。ただ俺の場合あらゆる物に才能という物がなかったから、どんなに鍛えても二流が精一杯だったんだ。だから一つに絞るんじゃなくて、あらゆる物に手を出して引き出しを増やすしかなかったんだよ。」

 士郎が少し落ち込みながら言う。割り切っていることとはいえ、やはり凹むものは凹むらしい。

「まあ、例えどんなに凡人であっても努力し続ければ歪であるかもしれないけど辿り着くものはある。それは絶対に天才にも通じる物だ。」

 エヴァはその言葉に目を丸くする。

(―――確かにそうだろう。だが普通は無理だ。そこに辿り着くまでにどれだけの修行と、どれほどの絶望にあう。限られた者が辿り着く極地。……なるほどこの男から感じる強者の匂いはそれに辿り着いたということか。)

「でも、士郎君の弓はすごいよ。」

「そうなのか?」

「うん。だってすっごく遠いところまで射れて、絶対に外さないんだもん。」

「……実際、どれほどの腕なんだ?」

「なんと、百発百中なの!士郎君が言うには四キロ先までなら外さないって。」

「それで、あらゆるものに才能がないだと!!」

「俺の弓は才能といえるもんじゃないんだよ。やっていることは基本のことだし。」

「そこまで当てられるのが才能ではないと。」

「あー。これはなんて言うかだな…。まず弓然りなんであれ、的に中てようとする前。誰だって、当たるのを想像してから、その通りに手を離すだろう?あまり実感はないんだけど、昔の友人によると俺のそれはそのイメージが他の人よりも“視えてる”らしい。これは才能というよりも精神的なものなんだよ。だからどちらかというと才能というのとは違うかな。」

「――――よく分からんが貴様が化け物じみて弓が上手いという事はよくわかった。」

(貴様の精神がイカレていることもな。)

 横目でなのはを見ながらこれは大変そうだと心の中で呟いた。

 その後修行を始めた士郎達にエヴァは弓が結局どこから出したのかという質問を忘れていた。


「――――さて。」

 なのはの魔法や士郎の射を興味深そうに見えていたエヴァであったが、一通り修行が終わったころ提案をする。

「賛成!」

 なのはが挙手しながら言う。なのははこの世界の魔法などに興味があったので嬉しそうであった。それにエヴァも楽しそうに笑う。

「では―――」

「ああ、それには賛成だが少し後にしたほうがよさそうだ。」

「なんだ。何か不満があるのか。」

「茶々丸がこちらに向かってきている。おそらく朝食の支度が出来たんじゃないか。」

 しまったな。結局食事の準備を全てさせてしまった、という士郎の呟きを無視しエヴァとなのはは士郎の視線の先を見るが見えるのは木ばかり。

「おい。茶々丸はどこにいる?」

「今出てきたばかりみたいだからここに来るまではもう少し時間が掛かるんじゃないか。」

「私の家からここまでどのくらい離れていると―――まさか見えているのか?」

「当たり前だ。そうでもなければ四キロ先に中てるなんて出来るわけないだろう。ここからなら多少木々が邪魔だが何とか確認は出来る。」

「……士郎君の視力って相変わらずすごいねぇ。」

「というか、異常だろ!真祖以上の視力って貴様本当に人間か?!」

 暫くしてやってきた茶々丸が見た光景は、士郎に掴みかかっているマスターとそれを苦笑いで見ているなのはだった。
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