短編・嘘予告

□デート
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(なんか士郎のキャラが違うような気がするが全力で見逃せ)




「ほら、士郎君こっちこっち!」

「そんなに急がなくてもいいだろう。」

 学校を明日に控えたなのはは士郎をつれ麻帆良にある商店街を歩いていた。

「そもそもそっちには別に買うものはないぞ。明日は色々と忙しいんだし早く終わらせて帰らないか。」

 明日はなのははこちらに来て初めての学校、士郎は仕事がある。ここは早く帰り明日に備えるべきだと士郎は思っていた。

「…はあ。士郎君もしかして忘れちゃってるの?」

 そう思い声をかけるものの、それに何故かなのははジト眼で士郎を見てきた。

「忘れてるって…何か約束したか?」

「はあ。士郎君から声をかけてくれたから期待してたけどやっぱり違うのか・・・。」

 士郎の質問に呆れたような、それでいて当てが外れたことを残念がっている表情で、腕を組み、首を振る。

「…士郎君。ここに来た時、ユエちゃんって女の子と会った時のこと憶えてる?」

「…ああ。憶えているがそれがどうし」

「もう!その時、士郎君約束したでしょう。この埋め合わせをするって!」

 詳しくは本編二話を参照。

「…っあ。」

「…まあそんなことだと思ったけどね。と言うわけでせっかくだからこのままその埋め合わせをしてもらおうとしてるの。」

 不満そうにしていたが思い出したことが嬉しかったのか、顰められていた眉が少し緩くなった。

「ほら。分かったら行こう!」

「待てって、なのは。それはまた今度に・・・」

「いいから!」


 そんなことがありまして、只今なのはと士郎はゲームセンターの前まで来た。
 生徒が多く利用するこの施設は、普通のゲームセンターと比べかなり大きな店作りとなっている。

 ちなみになのはがここを知っているのはエヴァから聞いたからである。

 中に入ると冷房が効いた店内の涼しげな空気が士郎達にあたる。だがそれを士郎が意識する前になのは士郎の手を握り奥へと行く。

 ここに来る前も含め、ここ最近いろいろと忙しくこのような施設を利用することはなかった。そのためゲーム好きな面があるなのはは結構楽しみであったのだ。

 そうしてなのはは士郎を連れまわす様子なかたちで暫くここ最近ないほど遊ぶこととなった。

 以外に士郎が音楽系のゲームが得意であったり、対戦型ゲームなどで士郎と戦いなのはが圧勝したりと様々だ。

 他にも定番といえるクレーンゲームで昔見たうさぎのヌイグルミに良く似たものをなのはが見つけほしがり士郎に取ってもらった。あまり得意ではなかったのか士郎はてこずりかなりのお金をはたくことになったが。

 まあ、それはそれとして中にはウサギの他にもフェレットのヌイグルミなどもあったが、何故か士郎はそれに顔を顰めなのはが欲しがっても頑固として止めた。


 そんな風に遊びまくっていたところ、ふとなのはの足が止まった。何だかんだで楽しんでいた士郎の足もそれにつられ止まる。何を見ているのだろうかとなのはの視線の先を見れば

「ほらほら、次はどうする!」

「ほにゃらば、カラオケにいこ〜〜!!」

「ちょっと、はしゃぎすぎ二人とも。明日も学校あるんだからそろそろ帰らないと…。」

「よーっし次はカラオケ行ってみよー!!私じゃんじゃん歌うよ!!」

「話を聞け!そこのバカ!!」

 なにやらなのはと同世代ぐらいの女の子三人が、楽しそうに笑い合いながらゲームで遊んでいた。

「―――みんな元気かな……。」

 そんな様子を暫く黙って見ていたなのはがポツリと思わずと言った感じで呟いた。それに士郎は何も言うことは出来ない。

 思わず出た言葉を士郎に聞かれた事に気づき、なのはが慌てたように言う。

「あ、えっとね、ほら!あの子達を見ていたら、明日いよいよ学校なんだって意識したら、なんだか昔の小学校の頃思い出を思い出しちゃって…。」

 身振り手振りを振りながら心配しないでと士郎に示す。

 最近こうしてなのははよく昔のことを思い出すようになっていた。始めてこの世界に来たときもそうだ。今まではなかった日常やこれからの学校などのことがなのはに昔のことを考えさせるのだろう。

 だがこれは別に今の状況が不満と言うわけではない。別に寂しくないといえば嘘になるが先程口から漏れた言葉はどちらかと言えば昔の事を思い出し懐かしんでいる感覚に近いだろう。

 思うところがないわけではないが、それ以上に今はこれからの士郎との生活は楽しみにしているのだ。

 しかしそれでもやはり士郎は気にしてしまうのだ。もし自分と会わなかったらなのはは今も友人たちと一緒に学校に行っていたのではないかと。そんなIFを。だがそんなことを今更行ったところで意味もないことも同時に士郎は分かっていた。

(…ならなのはにそうしたものを背負わせてしまった俺はここで今なんと言うべきだ?)

 だから考えるなのはの当たり前の幸せを奪ってしまった自分がなのはにしてやれることを。

「……俺はずっとお前の傍にいる。」

 普段士郎はこんなことを口にしない。何せ相手に自分の価値を求めないような奴だ。そんな士郎が相手が自分に価値を見出していること前提にこんな言葉を言うなんて事は普通ありえない。それに士郎は本来自分ですら信じていない、できない言葉を口にすることを嫌っている。

 だがそれでも士郎はそれを言った。ある種の覚悟をこめて。

「っえ?」

「……ほら!次はどこに行くんだ?」

 自分でも似合わないことをいっているという自覚はあるようで、何時にもまして仏頂面になる。その様子に暫く目を瞬かせていたなのははやがてクスリと笑いを零す。

 そのことに気付いた士郎は憮然とした顔になる。
そのことに気付きなのはは慌てて周囲を見回すとあるものが目に入った。

「じゃあ、えっと、…あれなんて、どうかな…?」

 なのはが指し示す方向。それはゲームセンターならどこにでもある機体。その名はプリクラ。


「……なんでさ。」

「ほ、ほら!いままで一緒に撮ったことないから・・・ね?」

 そう士郎となのははそれなりに長い期間一緒に過ごしてはいるがプリクラを撮ったことはない。どうも士郎はああいう物が苦手であったため今まで誘われても断っていたのだ。

 だが今回はそうもいかない。何でもすると言った以上約束は約束である。

 しぶしぶ狭いその機体の中にはいる士郎。

 中に入ると馴れた様子でなのはが画面を弄りはじめた。なのは自身はこういったものは士郎と違い、アリサなどと一緒によくとっていたためこういった操作は手慣れている。

 そうして作業が終わり撮影段階。

 なのはは何か気合を入れるように深呼吸を一つ。

 その後、士郎を見、えいっと傍にいる士郎にもはや体を乗り出すというか体を預けるように抱きついた。

 そんななのはのいきなりの行動に士郎ははたから見ても分かるほど大いに慌てた。

「な、なのは!」

「…え、遠慮することないっていったよね!士郎君!」

 顔を赤くさせながら高さの関係があるため下から見つめ上げられるような形になりながら、取り繕うように急いで言うなのはの様子に士郎も何も言うことが出来ず、黙って従うことしか出来ない。

 そんな二人に構うことなくぱちりとシャッターはきられた。


 帰り道

 かなり想定していた時間よりも遅れてしまった。家で食べるはずであった食事も結局今から帰って作るよりも早いと言うことで、外で済ませてしまった。

 そのことに多少思うことがある士郎だが

「……えへへ」

 嬉しそうになのはは手に握られたものも眺める。そこには、大きなハートに囲まれたかなり密着しているなのはと士郎のプリクラがある。

 それを見て、まあいいかとなのはの嬉しそうな笑顔を見て思う士郎。だがそこでふと思う。

(あれ、これってデートじゃないか?)

 今日の行動を思い出すと遠坂に引っ張られるように連れられたデートと状況が似ている。

「?どうかしたの士郎君」

「ッ!い、いや、なんでもない。」

 意識すると少し顔が赤くなった。先ほど、浮かんだ考えを打ち消しなのはよりも知らず一歩先に出る。それになのはは疑問に思ったが再び手元を見て顔をにやけさせた。


 この日、人知れず士郎はまた一つなのはのことを意識した。




サラダ油さんのリクでした。
どうでしょうか?今回はカットする予定でした、士郎の買い物になのはが着いて行きデート?といった感じにしました。他にも色々と案がありましたが、時期的にちょうど良いと思ったので。
少し物足りないような気がしますが、リクエストどおりなのはは士郎に甘えられているでしょうか?
 少しアレな感じですが今回はこれでお願いします。次回があればもっと精進させていただきます。

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