短編・嘘予告

□我慢の限界 『本編』
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外伝:アインさんのリク(大変お待たせしました)


「…またなのか?なのは。」

「…うん。」

 そろそろ寝るかと布団に入る時だった。枕片手に入ってきたなのは。

「今日はどうした?」

「…え、えっとね。えっと…。」

「はあ。」

 思わず漏れた俺の溜息にビクリと震えるなのはの様子に内心しまったと思う。

 別になのはと一緒にいるが嫌というわけではない。

「ほら。」

「うん!!」

 えへへと笑いながら俺の布団に入ってくるなのは。その姿は本当に嬉しそうで。

 ゆえにいつか別れることになるだろう日を思い近づきすぎたと思った。

(そろそろ距離をとらなきゃな…。)

 隣で嬉しそうに腕にしがみつくなのはの様子に内心挫けそうになるものの士郎はそう決意した。



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

「・・・・・・士郎くんの様子がおかしいの。」

 なのはの両親が経営している喫茶翠屋。サービスとして出された紅茶とシュークリームに手も触れず、額を突き合わせ話す、まもなく小学二年生になる少女たち。

 ・・・・・・何かシュールだ。

 最近どうにも元気がないなのはの様子を見るに見兼ねた親友アリサとすずかがこれを期にと言った形で聞いたところ、多少しぶしぶといった感じであったが話してくれたのは。

「士郎くんっていうことはなのはちゃんのお父さんじゃなくて、一緒に住んでるなのはちゃんのお兄さんみたいな人のことだよね?」

「・・・ああ!なのはがいつも話す人か。そういえばまだ会ったことなかったわねえ。・・・・・・で?そいつがどうかしたの?」

興味心身になのはへと顔を近づけるアリサとすずか

「・・・・・・最近一緒に居てくれないの。」

「「へ??」」

 想像していたものよりも深刻ではなさそうなその内容に思わず二人で顔をつきあわしお互いにぱちくりと視線を合わす。幾分か肩透かしを食らったような感じだ。

 なのはから父親が入院していたことで昔は皆忙しくて大変だったといったことを聞いていた二人はそれと同意に近い何かをなのはが抱えているのかと思ったのだ。

 そんな想像していた二人はなのはの悩みをほほえましいとすら思った。

 すずかなんかは私もおねえちゃんに構って欲しくってこういうことになったことあるな。とすら考えていた。

「家でお話ししようとすると何時の間にかどこか行っちゃうし。一緒にお出かけしようとしても最近良く断られるし。」

 だがどんよりとした影を背負って話すその様子に自分たちが予想していたよりもなのはにとって重要であること気付いた二人は真剣に考えてみた。

「ほ、ほら、なのはちゃん。おと残って言うのは士郎さんの年ぐらいになると女の子といっしょにいるのって恥ずかしくなるんじゃないのかな?」

「ふぇ?なんで?」

「じゃ、じゃあ、もう士郎君とは一緒にお話しをしたり、遊びに言ったりすることってできなくなっちゃうの…。」

「え、えっとね。私にも良く分からないけど、男の子っていうのは、ある時期になると女の子と遊ぶのを避けるみたいだけど、また一緒に過ごせるようになるみたいだから大丈夫だよ。」

 自身これといって実例を知っているわけではないが、なのはの悩みに必死に力になろうと姉や本から得た知識を話そうするすずか。

「で、でも、クラスの女の子とは普通にお話ししているみたいなの。この前も宿題を見てあげるって事で、女の子の家に行っていたし……。」

「え、えっと…そ、それは…」

 だが続くなのはが搾り出すように告げた言葉にすずかは流石に自身の知識じゃ、助言することができず、あわあわとしていた。

 その様子にますます落ち込み始めるなのは。

「私、士郎君に嫌われちゃったのかなぁ……」

 ポツリと呟かれたその言葉。

 それはなのはがここ最近ずっと恐れていたことあった。

 今まで黙って二人の会話をきいていたアリサだったが、その悲しそうななのはの顔を見て決心する。

「わかったわ、なのは。ここは私に任せなさい!!」



 その日の夜。最近はなのはとあまり話しすることなく2階へ上がってしまった士郎。それになのははまた暗い雰囲気を背負ってしまっていた。

 その様子に夕食の後片付けをしていたなのはの母親桃子の手が止まった。

 見るからに落ち込んでいる娘の様子に親として彼女も心配していた。

 最近士郎となのはが一緒にいないことは桃子も気付いていた。昔は四六時中一緒にいたといっていい二人だ。ここ最近の様子を見れば当然わかる。

 最初は思春期特有のものかと思い、第○○回家族会議で、とりあえずは静観の構えとなったのだが、どうも様子がおかしい。

 どうも士朗からはそういった”青臭い”ものは感じないのだ。娘なのはに関しては今の現状について改善される見込みがなくひどく悲しんでいる様子ですらある。

 このままではいかんと、実はつい最近桃子は行動を起こしていた。

 士朗がこの現状を引き起こしているのは傍から見ていて気付いた。

 なので士朗になのはへと歩み寄るように促してみたのだが、うまいことかわされうまくいっていない。

 ただ一つだけ成果と言えるものはあった。それは幾度もの士朗に正面から問いかけたときに思わずといった形でこぼれたひと言。


『一緒に居続ければそれだけ後がつらくなる。』

 その一言に対し深く踏み込もうとする桃子であったがいつものようにうまくかわされ踏み入ることができなかった。

(私ではこれ以上あの子に踏み込むことはできない。)

 何とかしてあげたいのに何もできない。それは桃子にとって非常につらいことだった。


 手を軽くタオルでぬぐい、俯いているなのはに近づく。

 そしてそっと、なのはを抱きしめた。

 なのはは泣いていた。

 抱きしめている桃子へと力いっぱい抱きつけ嗚咽を押し殺しながら懸命に絞り出すように言葉を漏らす

「……おかあさん。…私、なにかきらわれるようなことしたのかなぁ。もうしろうくん、わたしのこと、き、らいになっちゃたの?」

「なのは……。」

 なのはのその様子に桃子が気持ちを固める。 

 桃子ではだめなのだ。ここをどうにかしなければやがて自分のもとから、なのはのもとからいつの間にかどこかへと行ってしまうだろう。

 なのはから彼へと歩み寄らなければならない。

(私からではなくなのはから……)

 それがひどく悔しい。まだ幼い彼女に何もしてあげられない自分が。

「なのは。ちゃんと士朗君とお話しよっか。」

「わたし、してるよ。いつもこえをかけてるよ。でもしろうくん、ぜんぜん……。」

「ううん。そうじゃないの。なのはが今しているのは違うの。相手に理解してほしいと思うんなら真摯に相手と向き合って行かなきゃだめなの。怖がってっちゃだめ。」

 思わず苦笑する。そうしてこなかった自分が、こんなことを言うことに。

「…よくわかんないの。」

「そうね。なのはにはまだ難しいかもしれないわね。…うん。難しいことはいいわ。とりあえず思いっきり言いたいことを包み隠さず言いなさい!」

 不思議そうに首をかしげ腫らした目でこちらを見上げるなのはにいたずらっぽく笑う。

「えええっ!?…で、でも、嫌われないかな?」

「大丈夫。自信を持って。士朗君はあなたのことを大切に思っているわ。存分に甘えてきなさい。」

「……思いっきり」

「そう。士朗君相手に待っているだけちゃだめ。こちらからどんどんと攻めていくのよ!!」

 納得がまだいっていない様子のなのはにそのまま続ける。

「士朗君はね。多分分かってないのよ。あなたにとって彼がどれほどの存在なのか。だから教えてあげなさい。」

「……うん。私やってみるの!お母さんありがとう。」

「どういたしまして。」

「士朗君とお話ししてくる!!」

「いってらっしゃい」

 どたどたとあわただしげに階段へと昇るなのは。上から声が響く。

「士朗君!!!」

「な、なのは?いきなりどうした?大した用事でなければ出てくれ。俺はもう寝―――」

「―――士朗君。わたしの気持ちを聞いてください!」

 今夜は長くなりそうだ。

 聞こえてくる声に桃子は満足そうに思う。

 なのはなら大丈夫だろう。それは、なのはへの信頼だけではなく、士朗のことも含め思った。

 今目下一番の問題なのは、夫と息子を止めることだろう。



 すやすやと気持ちよさそうに眠るなのはに、やっと落ち着いたかと士朗は安堵のため息をつく。

 いきなり入ってくるなり、自分が俺のことをどれだけ思っているのか必死に語りかけてくるわ、もっと構ってくれとか、士朗君は他の女の子に優しいだとか、あれこれ違くない?と突っ込みを入れたくなるような話を延々と話していたなのははやがて疲れたのかようやく眠りについた。

 自分でも整理しきれていないのだろう。思いた端から怒涛のごとく投げかけられる言葉にさすがの士朗もアップアップだ。

 だがそんな状態でありながらも士朗はなのはが言いたいこと理解できた。ずっと一緒にいてほしい。そんななのはの純粋な気持ち。

 いつかいなくなるだろう自分と距離を取るためのものだ。昔は誰にも構ってもらえなかったなのはをみて最初はある種の同情のような気持ちで傍にいた。どうせ、暫くはこの子から離れることも出来ないという気持ちもあった。

 それがいつの間にか一緒にいるにつれ自分の心も癒されていったのだ。

 しかし今は仲の良い友人も出来た。遠くから見ただけであるが、二人ともとても良い子のようである。

 もう自分は必要ないだろうと思い、すこしずづ距離を取っていこうと思っていた。

 ・・・・・・でも。

「――しろうくん―――」

 腕の中ですやすやと眠るなのは。それを見てまだ早いかと少し思い直す。

「・・・・・・遠坂・・・俺は−−−」

 そう。まだ少しこのままで……。



 後日


「なのは。会いに行くわよ!!」

「え?だれに?」

 アリサは気合いの入った声でなのはに呼びかける。
 
「何って、士郎君ってのに話しに行くに決まっているでしょう。安心しなさい私がとっちめって上げるから!」

「っえ!?ま、待って、アリサちゃんその事なんだけど、実は…。」

「何しているのよ。早く行くわよ!なのは、すずか!」

「うん。なのはちゃんを関しませるのは流石に私も感化できないもん。」

「ふ、二人とも、気持ちは嬉しいけど少し待って!」

 その後。会って早々跳び蹴りをするというという出会いを果たす士郎とアリサ。もちろん士郎は軽く避けた。

 それからなんだかんだありどこか意気投合した士郎とアリサとすずかの様子に、なのはは私以上に仲良くなっていないかと今度はやきもきすることとなるのは別のお話し。

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