小説 クロスオーバー(Fate・なのは・ネギま)

□第十一話
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 着替え終わったなのはは今部屋に取り付けてあった鏡で変なところはないかと、体を回しながら確認している。その頬は興奮のためか少し赤くなっていた。

 部屋は、すでに小物などが揃えてあり、ベッドには兎のぬいぐるみなども置いてある。これに関してはかわいいといっていいかわからないが…なんか呪われそうである。その脇にある写真たてには幼いころのなのはと士郎、他に何人かの人が笑顔で写っていた。

 まだ来て一日目に対して、すでに女の子の部屋といった感じが出ている。家具などはもともとこの部屋にあったものだが、他の小物などはなのはが常に持っていたものや昨日の士郎との買い物の時に買ったものである。

 ちなみに士郎の部屋は逆に全く物が置かれておらず、もともと部屋にあったもの以外は何もない。

閑話休題

(…うん。タイは曲がってないし、スカートの長さも問題ないはず。こういうことは始めが肝心だもんね!)

「―――よし!」

 暫くし自分の姿に満足したのか、満足げに頷いたなのはは、気合いを入れるように両頬を叩いた。

 力を入れすぎたのか若干頬がヒリヒリと痛むがなのはは気にせず、近くに置いてあった機能何度も中を確認した鞄を手にし部屋を出た。

 階段を下り、士郎が待っている部屋にいざ入ろうとしたとき、ふとその手が止まった。

(士郎君、似合ってるって言ってくれるかな?)

 そんなことを思い手が止まってしまったが、時間も押している。なのはは一つ深呼吸をしいを決して中に入った。


 日課の朝の特訓は今住んでいる家の庭ではさすがに出来なかった。そのため、以前エヴァの家にいたころに使っていた森の中にある広場で練習をしていたところ、そこにエヴァが来たりし、早朝から騒がしかった。

 ちなみに朝ごはんは初日ということもあり、いろいろ準備があるため軽く食パンで済ませた。これになのははやや閉口したりしていたが。

 なのはは制服に着替えるため、二階の自室で着替え中。

 士郎は、ようやく落ち着いた時間を確保できたと、リビングでインスタントコーヒーなどを片手に飲み新聞を読み、なのはの支度を待っていた。

 士郎は特に服の指定などされていなかったが、一応エヴァたちと買いに行ったときに買ったスーツを着用している。

 なのはが中心にエヴァと選んだそれは、中々よい値段をしていたがよく士郎に似合っている。

 そんなびっしと決めた格好でコーヒーを嗜む士郎は、なぜかコーヒーを飲む度に眉毛が少し跳ねさせていた。

 なのはと二人で旅をしていた時はゆっくりコーヒーを飲む暇などもあまりなかったため気にせずインスタントのコーヒーを飲んでいたが、こちらの世界に来てエヴァの家で過ごすことになってからは、茶々丸が丁寧に入れてくれていた。そのためすっかりその味に慣れてしまった士郎には普段、普通に飲めていたはずのコーヒーがあまりおいしく感じられなかった。

 ぼんやりとこれは久しぶりに豆から本格的にやってみようかと考え出したところで階段から足音が聞こえてきた。

 それに合わせ士郎は手にしていた新聞を片付け、残っていたコーヒーを一気に飲み干す。

 そんなことをしていればなのははもうすでにリビングのドアの前に来ていた。しかしそれからどういうわけか中に入ってこようとしない。それに首を傾げているとようやくドアが開いた。

「士郎君。…どう、かな?」

 恥ずかしそうに顔を紅くしながら、恐る恐る下のリビングに入ってきたなのは。その格好は魔帆良学園中等部の指定されている制服を着て、髪はサイドに止めている。そわそわと落ちつかなげに両手を弄り、士郎をチラチラと見ている。

 なのはのその姿に思わず暫くボーっとしてしまう士郎。その様子に不安そうになるなのはの姿に士郎も気付き、慌てて感想を言うべく口を開く。

「よ、よく似合っていると思うぞ。」

 しかしとっさに出てきたのはそんな言葉しかでなかった。しかし、それでもなのははそんな士郎の言葉に

「ほんと!」

 耳まで赤くしながらも嬉しそうに微笑んだ。


 さて、もう少しゆっくりとしたいところだがあいにく時間も押している。なのはと士郎は、まず昨日の約束どおり校長室へと向かった。

 校長室は女子中学校にある。先日は全く人通りがなかったが、学校に行く道は、学校へと急ぐ生徒たちで溢れている。そんな中を歩けば、当然、なのははともかく男である士郎はかなり目立った。具体的に言えば、その姿が女の子たちの目に映ればコソコソと友達同士で囁かれる程度には。

 それに士郎は、外見上気にしている様子を見せなかったものの内心かなり肩身が狭かったり、気恥ずかしかったりしていた。精神年齢というか、過ごしてきた日々は、かなりの年月になるもののこういったことには馴れていない。さらに言えば今の肉体年齢は十七歳。肉体に引きずられて少しばかりそういったことを思うのは仕方ないことなのかもしれない。

 そんな士郎の心の葛藤に気付いているのかいないのか、なのはは若干おもしろくなさそうな顔をしているように見える。


 そんな感じであること少し、校舎に入った士郎達は学園町室に辿り着いた。

 ノックをして、名前を告げると入室を許可される。中に入るといつかのように学園長がおくにある机を挟んで椅子に座り、その傍らをタカミチが付き添うように立っていた。二人はこちらが入ってくるのをみて笑顔をみせる。

「おはようございます。学園長先生、高畑さん。」

「おはよう、高町君。衛宮くん。」

「士郎君、なのはくん。呼び出してしまってすまんの。」

「いえ、気にしないでください。こちらこそありがとうございました。あんなに立派な家を用意していただいて。」

 なのはのその返答に学園長は笑みを深める。

「いやいや。高町くんはしっかり者じゃのう。そんな気にせんでもよい。好意の念がなかったわけじゃないが、こちらも理由があってあれを貸したのじゃからな。」

「…理由ですか?」

 それに士郎君は反応する。昨夜からなぜあのような立派な家があてがわれたのか疑問であったのだ。

「なに、そんなに硬くなる必要もない。士郎君の立場はワシが個人的にこちらに呼んだ者たちということになっておる。こちらがお願いし来てもらっていることになっているのじゃ。こちらの都合で来て貰っている以上、いわば衛宮君達はお客様のようなものじゃ。その様な者達を他の一般生徒の寮などに入れるわけにはいかんじゃろう?これは組織のメンツにかかわることじゃしな。」

(それにそのほうが何かと都合がよいしのぅ。)

 口では立派なことを言っているが内心では、悪戯めいた笑いを浮かべている。

 しかし、士郎たちはその内心に気付くことなく、なるほど、と士郎となのはは内心で頷いた。
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