小説 クロスオーバー(Fate・なのは・ネギま)

□第一話
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 朝、まだ日が昇ってすらいない時間。俺は一人荷物をまとめていた。


 闇の書事件が終わってから4ヶ月後、俺は管理局から第一級危険人物として、指名手配されることとなった。
 
 PT事件から俺の事を次元震は起こさないまでもロストロギアに近い性質を持っている宝具を多数使うとして危険視していた者達がいたようで、闇の書事件で俺が固有結界『無限の剣製』を使用し、防御プログラムをアルカンシェルを使わずに破壊したことや、その際に俺の宝具が全て魔力で作られているということを知り、その危険性からロストロギアを作り出す危険な人物として、本格的に俺の排除に乗り出したらしい。リンディさんは、俺のことを弁護してくれた様だが、結局危険と言う声が高まり、駄目だったそうだ。そのことについて、リンディさんにかなり頭を下げられてしまった。

 別に俺はリンディさんのことを恨んでなんていない。俺のことを危険視している輩がいることは以前から聞かされていた。固有結界がばれることで、自分が不利になることもわかっていたのだ。しかし、あの時もしも固有結界を使用しなかったら、かなりの被害がでてしまっていたのだ。結果的に俺は多くの人を救うことができたのだ。だから、他にあの状況を何とかする方法があったとしても、俺は自分の選択を後悔をする事はないだろう。

 あまり物を持つことはなかったので、すぐに荷物はまとめることができた。昨日の夜に士郎(高町)さんにはここを出て行くことは説明してある。かなり止められてしまったが、もうここにいることは出来ない。ここにいる人たちは皆優しい人たちばかりで、だからなおさら、ここにいる人たちに迷惑をかけるわけにいかない。

 玄関を出て振り返る。

 俺となのはは契約が結ばれている。おそらくこの契約により俺はこの世界からの修正を受けないでいられるのだろう。しかし俺が指名手配された今、この契約のせいでなのはを巻き込んでしまうかもしれない。・・・破棄するべきだろう。
それによりおそらくは、世界の修正を受け、およそ二ヶ月、いや良くても一ヶ月持つかどうかだろう。だがそれでも構わない。俺のせいで巻き込んでしまうぐらいなら消えてしまったほうがなのはのためだ。
消えるまでの時間は、前と同じように人助けの旅に出るか。ここは前と違い並列世界もある。助けを求めている人も沢山いるだろうからな。

 最後に今まで世話になった家に深く頭を下げ、前を見て、ルールブレイカーを投影しようとする。と、そこには、

「・・・なのは」

「行くんだね、しろうくん。」

 なのはが門の入り口に立っていた。

「・・・ああ、そうだ。これ以上ここにいて、皆を巻き込むわけには行かない。」 

「うん。しろう君ならそうすると思った。」

 なのはは少し笑い、門から離れ士郎の前に立つ。背中には少し大きめのバックを背負っていた。

「しろうくん。私も一緒に連れて行って。」

「・・・それは出来ない。なのはを俺の都合に巻き込むわけにはいかない。危険な目にだって沢山あう。それに、ここにはもう戻ってこれないんだぞ。」

 士郎の言葉になのはは、すこし顔を俯かせる。

「・・・うん。分かってるよ。もうお家には帰ってこれないかもしれないし、お父さん達にも会うこともできないかもしれないって。何度も、考えたよ。」

「なら!!」

「・・・でもね!」

 ふせていた顔を上げ、

「わたしは、わたしは、それでも、士郎君の傍にいたい!一緒に笑いあったり、お話したりしたい。」

 真っ直ぐに俺の目を見た。

「ッ、…俺の代わりなどいくらでもいる。それに、なのはには心配してくれる家族がいるんだ。士郎さんたちに何も言わずに出ていくのか?」

「お父さんは、許してくれたよ。…すっごく、止められたし、たくさんけんかしたよ。―――でも、最後はね、やっぱりお父さん達の子なんだって、頭を撫でて許してくれたよ。」

 たくさん泣いたのだろうその目は、赤く腫れあがっていた。

「っな!?士郎さんは何を考えて・・・。」

「それに、そんなに悲しいこと言わないでよ。しろうくんの代わりなんていないよ。しろうくんはわたしが一人で泣いてた時、いつも傍にいてくれた。寂しかった時は、いつも一人じゃないって手を握って、わたしを支えてくれた。…独りは、とっても淋しいんだよ、しろうくん。だから、今度は私がしろう君を独りにしない。わたしがしろうくんを支えるよ。」

 なのはは、ただ真っ直ぐな瞳で俺の目を見据える。その真摯な瞳に目を逸らすことができない。

「しろうくん、私夢が出来たんだ。」

 なのはは呆然としている俺の姿にクスリと笑みを溢しながら、俺の手を握る。その体温の暖かさにはっと正気に戻った。

「…だったら、なおさら俺と一緒に来たらダメだ。俺といたらなのはのその夢も叶えることが出来なくなるんだぞ。」

「ううん。しろうくんと一緒じゃないとだめなの。だって、」

 なのはは、出てきた朝日に照らされながら、

「―――だって、私の夢はね、しろうくんを思いっきりハッピーにする事なんだから。」

 眩しくなるような笑顔を俺に向け、夕暮れに染まる教室で俺に遠坂が言ってくれたのと似た言葉を俺に言った・・・。
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