小説 クロスオーバー(Fate・なのは・ネギま)

□第二話
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 昼間は多くの人が利用しているだろうごく普通の街道。夜になればその道は、寮で設けられている門限などにより辺りには誰もいなくなり、そこを照らすは街灯と月明かりのみである。

 普段ならそうであった。だがそんな道を今、一人の少女が何かに追われるように走っていた。

(―――はあ。もうすっかり暗くなってしまったですよ。探していた本を見つけたからといって、少々夢中になりすぎてしまったです。これは後で猛省しなければなりませんね。)

 どうやら時間に追われているらしい。本来ならもうとっくに家に帰っている時間であったのだ。

「のどかも心配しているでしょうし・・・帰ったらしっかりあやまらないといけませんね。」

 夕映の頭に一人の少女が心配して部屋の中を右往左往している様子が浮かんできた。心配をかけてしまっているだろう事に、申し訳ないに気持ちになる。

 ちゃんとのどかには謝罪をしないと。

 これで何回目か。夕映はこうして走っている間、同じことを繰り返し考えていた。

 そうこうしているうちに漸く見慣れた寮が見えてきた。後何分もしないうちに着くことが出来るだろう。

 それに安堵した夕映は今までずっと走って来たために乱れた息を整えるために一度足を止める。

 彼女は図書館探険部というものに所属しているため見た目よりも体力があったがさすがに疲れたようだ。

(や、やっと寮が見えてきましたです。走ったせいで、すっかり汗をかいてしまいました。帰ったら早くおふろに入らなくてはなりませんね。)

「全くなんでこんなに図書館島と離れているところに建てるんですか。」

 まあ、こんなこと愚痴なんてこぼしても何か変わるわけではないんですが。とひとりごちたあと再び走るために前を見た。

 さて、あと少しですしもうひと頑張りです。

 そんなふうに気合いをいれて自然下がっていた頭を上げた所で。

「ちょっと待ってくれないか。」

 後ろから声がかかり思わず走りだそうとした足が止まった。

(・・・おかしいです。こんな時間に人がいるなんて。しかも声からして男性。教師ならいざ知らずこんなところにいるなんて。まさか、変質者でしょうか?女性的な魅力がいささか薄い私に男性が声をかけるとは考え難いですが・・・)

 もし教師なら逃げるわけにはいかない。いつでも寮に逃げられるように意識しながらゆっくりと声のした方にゆっくりと振り向く。するとそこには、

「あー。急いでいるところ申し訳ないけど少しいいかな?」

 月を背に赤いコートを着た男の人は、月に照らされたその髪を鈍く光らせ、鉄の意思を感じさせる目をこちらに向け、そこに立っていた。

 その姿に見覚えはなく、かといって教師にも見えなかった。

 しかしそうであるも関わらず彼女は逃げなかった。・・・いやそのような考えなど忘れてしまった。



 その時はただ目の前の人がとても幻想的に見え、

 その時の私は、不覚にも周りの風景やその男性の後ろから走ってくる女の子なども目に入らず、ただその姿に見入ってしまっていたのでした。
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