小説 クロスオーバー(Fate・なのは・ネギま)

□第六話
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「待ってよ!エヴァちゃん!」 

 校舎を出てどんどんと前に行ってしまうエヴァに少し遅れて校舎を出たなのはが追いかける。

 朝が早いことと学校が休日ということで道にはまだ人がおらず、周りは静かだった。

「エヴァちゃん!」

「…ええぃ、うるさい!!そんなでかい声で私の名前を呼ぶな!」

 そんな中、なのはの声はよく響く。エヴァはそれに対し、いらただしげになのはの方を向き怒鳴り返す。その声の大きさに電柱に止まっていた鳥達が一斉に飛び立ってしまった。それになのはは内心苦笑しながらもやっと立ち止まったエヴァの下に急いで駆け寄る。

「だいたい何故、貴様に馴れ馴れしくエヴァちゃんなどと呼ばれなくてはならんのだ!」

「えっと、タカミチさんや学園長先生にもエヴァって呼ばれてるようだったからあだ名かなって、思ったから呼んでみたんだけど…嫌、だったかな?」 

 すこし首を傾げながらエヴァに問うなのは。その顔は少しさみしそうであった。それにエヴァは舌打ちしながら返した。

「嫌に決まっているだろう!何故、会ったばかりの貴様なんかにいきなりそんな馴れ馴れしく接さられなければならんのだ!」

 エヴァは今までの行動からも分かるようになのはのことが好きではない。いや、それは正確ではない。苛ついてるという表現がしっくりする。

 エヴァは、士郎から自分と同じ数多くの憎悪の血の匂いを嗅ぎ取っていた。昔と違い平和になったといえるこの時代では久しく感じなかった物である。…そして、何よりもその眼に何か近しいものを感じたのである。故にエヴァ自身は気付いていないが、少なからず士郎に対して同族意識の様なものを感じていた。

 そのため、自分と同じ闇の人間であるはずの士郎に対して傍にいる光の側であろうなのはが一緒にいるのか分からなかった。まさかそれを知らないなどと言うことはないだろう。二人を観察すれば長く共にいて、お互いに信頼しあっているのが分かる。お互いのことを理解してなければ、あそこまでの関係にはならない。

 だからエヴァは自分と同じであるはずである人間となのはが一緒に行動しているのかわからず、何ともいえない苛立ちを感じていた。

「何でって、私はエヴァちゃんと友達になりたいんだよ。」

「私と友達?」

 なのはの言葉にエヴァは暫く呆気に取られる。だが、すぐに顔を顰めてなのはを睨んだ。

「ふん。何を言うかと思えば友達だと?貴様は私の話を聞いていなかったのか?私は吸血鬼なのだぞ。人とは違う。正真正銘の化け物。人も何人も殺してきた。貴様はそれを分かって私と友達になりたいなどと下らん戯言を言っているのか?」

 別にエヴァにとって人と友好的に関わっていくことは、少ないながらも始めてのことではない。だが、そもそもエヴァと友好的な関係にある者たちはどれも一癖も二癖もあるような者ばかりで一般で言う友達と言うのとは少し微妙な関係。なのはと士郎のような関係とは異なる。それは、エヴァが求めているナギも違う。

 まあ、つまり早い話が、なのはのように自分が吸血鬼ということを理解しながらも、自分に対し純粋な好意のみで、友達になりたいなどと言われたのはこれが初めてであったということだ。故に今までそのような事を言われたことのなかったエヴァは戸惑っていた。

「そんなこと関係ないよ。人じゃないとかそういうの関係なくて、私はエヴァちゃんと友達になりたいの。」

「・・・何も分かっていない餓鬼が。」

「うん。正直、私にはしろうくんとエヴァちゃんが何を話していたか分からなかったの。それでも、エヴァちゃんが吸血鬼っていうもので、人をたくさん殺してきたって言うのは分かる。」

 そこで、なのはは一度言葉を止める。思い出すのはなのはが魔法に関わって知った士郎の過去。それを思い出しながらなのははゆっくりと言葉を続ける。

「…それが正しいことなんて言わないよ。けど、エヴァちゃんが本当はしたくてそうしてきたわけじゃないって言うのも分かる。…しろうくんと同じ。したくなくても、そうすることしかできなかったんだよね。」

「・・・ふん。何を言い出すかと思えば、ずいぶんと勝手なことを言ってくれるな。」

「うん。確かにこれは私が勝手に分かった気になっているだけかもしれない。でもね、エヴァちゃん―――」

―――寂しいそうな目をしてるよ。

 そのなのはの続けた言葉にエヴァの体が固まる。
 
(私が、そんなことを思うはずが。)

 エヴァは固まった体に叱責するように心の中で繰り返す。

―――だが、はたして本当にそうであると言い切れるのか。

「ッ!!」

 その頭に過ぎったそれにエヴァは愕然とする。そう確かに吸血鬼となった時、この学園に囚われることになった時エヴァは心の中で寂しかった。

「―――そうであったとして何だというんだ。貴様には関係のないことだろう!!」

「私がね、エヴァちゃんと友達になりたいと思ってるのは、私自身が寂しいっていう気持ちもあるかもしれないけど、私はそれ以上にエヴァちゃんにそんな寂しい目をしてほしくないって思う。」

 なのははどこまでも真っ直ぐなその目でエヴァの目を見る。それにエヴァが息を呑む。

「・・・何故、何故貴様はそこまで、私に構おうとする。」

「・・・私も小さい頃に、寂しかった時があったの。エヴァちゃんみたいなことじゃないだろうけどね。その時は、士郎君が私のそばにいてくれたんだ。エヴァちゃんはその時の士郎君が来る前の私と寂しそうな目をしてて、エヴァちゃんにそんな目をしてほしくなかったからかな。それが理由かな。」

「…変わった奴だな。貴様は」

「にゃはは。よく言われます。」

 小さくエヴァが呟いた声になのはは苦笑する。

「それだけか?」

「うーん、他にもあるんだけどね。私個人だけのことじゃないからちょっと言えないかな。ごめんね。」

「ふん。まあ何であろうと、自分がそうであったからと私にも同じように、か?善意の押し付け。ずいぶんと自分勝手な考えだな。貴様は何様のつもりだ。」

「うっ!」

 エヴァの指摘になのはは言葉に詰まる。なのはもこれが、自分勝手なことだということは少なからず自覚していたのだ。

「えっと、あの、そういうわけじゃ。でも、違うとは言い切れなくて・・・あー、そうじゃなくて、」

 なのはがわたわたとする様子を見て、エヴァがからからと笑いだす。それを見てなのはが恨みがましげに上目使いに見る。それをエヴァは気にした様子もなくエヴァは笑い続ける。

「く、くくっく。エヴァでいい。」

「っえ、」

 愉快そうに笑いながらの突然のエヴァの言葉になのはが驚く。

「だからいいと言ったんだ。名前を呼ぶことを許す。」

「エヴァちゃん!」

 なのはが嬉しそうな笑顔でエヴァを見る。それにエヴァは赤くなりながらそっぽを向く。

「か、勘違いするなよ。別に私はお前を認めたわけではないからな。」

「うん!これからよろしくね、エヴァちゃん!!」

「よせ!くっ付いてくるんじゃない!!」

 
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