小説 クロスオーバー(Fate・なのは・ネギま)

□第八話
1ページ/4ページ


 剣戟の音が鳴り響く森。少し開かれた場所に士郎となのははお互いに獲物を握り、相手を打ち倒すべくそれは振るわれる。

 なのははその背に汗を走らせ、息を切らしているもその目の戦意は一切の陰りもなく、両手の小太刀で上下左右から迫る剣戟を防ぎ、時々相手にその両手に握られた二刀の小太刀で切りつける。

 対する士朗はなのはと対照的でありその頬に僅かながらも汗が見られるものの、息は全く乱れておらず、涼しげに中華を思わせる剣をなのはと同じく両手に握った剣をふる。

 やがて剣戟が加速していく。それにあわせてなのはの剣が徐々に乱れ始め、士朗に対して攻撃する回数が減り、やがては士朗の攻撃を防ぐのがやっとのことになる。

 そして、とうとう士郎の剣に対応できなくなり、なのはは両の手に握られた剣を弾かれその首筋に剣を当てられた。

 交差するお互いの目。そして、

「……参りました。」

「…まあ今日はいつもよりも持った方か。」

 なのはの降参の言葉に士郎はゆっくりと首筋に当てられていた剣を下ろした。


 用意していたタオルとスポーツ飲料を口に含む。これらのものは朝鍛錬に行くというなのはたちに茶々丸が用意してくれた物だ。

「…はあ。にゃはは。やっぱり士郎君に全然勝てる気しないよ。」

 飲み物を飲み一息ついたなのはは苦笑しながら言う。

「当たり前だ。そんな簡単に負けてたまるか。……まあ、なのはも最初に比べたら随分よくなったよ。」

「えっ!ほんとう?!」

「ああ。最初はどうなることかと思ったけどな。剣を素振りさせようとしたら、いきなり手から吹っ飛んできたし。」

 士郎が遠い目で過去を思い出す。なのはが、最初に木刀を素振りさせようとした時、魔法の強化で握力が上がっているはずなのに目を瞑って振り出した途端、いきなり手から離れ高速に士朗に向かってきたのだ。何とか士郎はよけれたものの、高速で自分の横を通り過ぎていく木刀に背に冷や汗を流した。

「お、思い出させないでえ。」

 あまり思い出したくないその出来事を思い出したなのはは恥ずかしさに身悶える。と、そこに

「ふわああ…。お前らこんなところにいたのか。」

 エヴァがまだ眠そうな目をこすりながら彼らのいる広場に現れた。

「あ。エヴァちゃんおはよう、」

「ああ。それよりお前たちは何をしているんだ?」

「朝の鍛錬だよ。」

 なのはが汗を拭くため置いていた小太刀を手に持って示すように振りながら答える。それを横目に見ながら、手から投げ出されても回避できるよう少し身構えながら士郎も答えた。今回は真剣なので割りと洒落にならない。

「昨日はいろいろとあったから出来なかったけど、いつもやっていることだったからな。」

「ほう。朝から精が出るな。ゴクゴク―――、ふう。…しかし、貴様はミッド何とやらとか言った魔法を使うのではないか?それはお前らの昨日の説明からするとなのはは遠距離だと思っていたのだが。」

 眠気目なまま近くまで来たエヴァはそのまま置いてあったスポーツドリンクを飲む。ちょうどそれを取ろうとしていた士郎の手が空を欠く。恨ましそうな目を向ける士郎を無視し、それをすべて飲み干す。
そこで頭が回り始めたのか昨日のなのはが言っていた説明を思い出し、少し首をかしげながら質問した。

 その様子に苦笑いしながらなのはは、自分が口にしたドリンクを士郎に渡す。

「うーん。別にミッド式だからといって遠距離とは限らないよ。私の友達のフェイトちゃんは、近中遠のどれでも出来るオールレンジだったから。まあでもフェイトちゃんは、珍しい部類だったから、大抵のミッド式の魔導使は遠距離主体で合ってるよ。一応私も遠距離主体の砲撃魔導使だし。私が今剣を士郎君に習ってるのは、どちらかというと私の我が儘のほうが大きいから。」

 士郎はそれに何の躊躇もなく口にする。

「確かに近距離の心得とか引き出しを増やすためってのはあるんだけどな。俺がそういう風に一つに定めずにいろいろな武器を使うから。だけどなのはの場合は、もう既にスタイルが確立していて、それを鍛えれば十分に敵を打倒する事が可能だからな。…って、なんだその眼は?」

 いや、とエヴァは目をそらす。

 なのはの場合デバイスの形から近距離をやるとしたどちらかと言えば棒術、槍術をしたほうが一々剣に持ち帰る必要もなく効率が良いのだ。まあ、なのはは一応そちらの鍛錬もしているのだが。まあそもそもなのはの場合、強力な防御魔法を使えるし近距離からの砲撃も可能であり十分に通じるのだ。なので、なのはがここで剣に拘るのは完全に彼女自身の我が儘によるものと言える。

「……うむ。貴様らの魔法がどのような物か分からんから何とも言えんが。では、なのはの我が儘とはどういうことなのだ?」

 エヴァたち魔法使い側からしても確かに大別して魔法使い型と魔法剣士型というスタイルの違いはあるもののある程度の実力者になれば関係がないといえるため、あまり気にするようなことでもないのかもしれない。しかし、最後につけたされた言葉が気になった。

 エヴァのその言葉に少しなのはは寂しげな目になる。

「………あ、あー。言えないことならば別に話さんでも構わんぞ。」

 その様子にエヴァはらしくないホローをする。それはエヴァも自覚しているようで照れくさそうに頬を掻く。その様子を他の学園関係者からしたら驚愕の視線が送られることだろう。まだ、付き合いが少ない士郎からもそれが分かったため、なのはのその信頼の高さに驚く。

「ううん。別に気にしなくても大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。」

 なのはもそれはもちろん分かっており嬉しそうに微笑む。

「そ、そうか…。」

 それによけいに照れくさそうくなったのかそっぽを向く。その耳は少し赤くなているのが見える。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ