DFF

□朱(あか)
1ページ/1ページ

状況は、決してよくない。
むしろ悪い。
敵に囲まれているうえに、敵に自分たちの戦力を把握されている。それに、今は俺とスコールの二人きり。
孤立しなかったことがせめてもの救いだろう。

そう思いながら、背を向けて立っているスコールに声をかける。

「大丈夫か?」
「あぁ。さっさと片付けよう。」
「そうだな。」

しばらく、空気の張りつめた状態が続く。



空気が___動いた。

(__来る!)

敵が一斉に襲いかかってくる。
前方の敵を切りつけ、勢いに乗せて後ろの敵も切りつけた。
同じようにスコールも、敵を倒していく。
敵の数は、あっという間に減っていった。
残るはあと4体。
「星よ、降り注げ!」
「はじけろっ!」
「これで…決める!はぁっ!!」
「これで……終わりだ!」


「終わったな。」
「あぁ……」
敵の気配が消えた…そう思って油断していた。
物陰に隠れていた、イミテーションがスコールに向かってフレアを放ってきたのを、俺は眼の端にとらえた。
「スコールっ!」
俺は、スコールを突き飛ばした。
とっさのことで、突き飛ばすだけで精いっぱいで防御が間に合わず、フレアをもろに食らってしまった。
イミテーションといえど、敵の一部。
武器だってもつし、魔法だって本物だ。
俺は、フレアを食らった反動のままに、吹き飛ばされた。
「クラウド!?」
スコールが受け止めてくれた。
外傷がひどい。血が止まらない…
「スコー…ル?」
「バカ野郎!なんでかばったりしたんだ!」
「良かっ…た。無事…だな。」
「待ってろ。今ポーションを…」
自分の持っているポーションをかけようとするスコールを俺は止めた。
「いい…」
「なぜだ!?」
「たぶん…もうこの体は…使え…ない」
「でも…!」
「いい…から…スコー…ルを…守れて…死ぬんなら…」
俺の本心。なぁ…泣くなよ。スコール。あんたに泣かれたら、俺、安心できないよ。
「クラウド…」
「泣くな…よ。俺だって…本当は死に…たくなんか…ないさ。正…直言っ…て怖い。剣士…がなにいって…んだよ、元兵…士がな…にいって…んだ…よって自…分でも…思う。」
「当たり前だろ?誰だって怖いさ。俺だって怖いよ。目の前で最愛の人が消えるなんて。」
そっか…スコールだって怖いんだ。
でも、自然の流れには逆らえないんだよ…
「ねぇ…スコール。」
「?」
「キス…して…くれない?俺、最後…に愛して…る人…の腕の中で死…にたい。で、キスも…されたい。」
「あぁ…」


______お前が望むのなら______


俺の、金髪の恋人にした最初で最後のキスは、ほんのり甘くて、朱い血の味がした。

そして、クラウドは光の粒子となっていった。

残ったのは、獅子と、朱い血だまり。


今まで俺の心を埋めていたもの

失って初めて気づいた

失ってしまった代償は

孤独と、絶望



孤独と絶望に蝕まれ

自分が砕けそうになるけれど

俺の記憶にある、お前の笑顔が

俺の存在を意味している


今度また会えたときは

あんたのすぐそばで笑っていよう

だから、お前も笑っていてくれるか?

今はそれだけを願い続ける


___お前のいない世界は『幻想』___

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ