短編集

□sugar
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「甘い…な」

「ん?そんなに甘く作ったつもりはねーんだけど…」



休日。四月一日がわざわざ俺の家に訪ねてきた。

そんなこと、滅多にない。
どうもコイツは俺のことを毛嫌いしている。


何もしてないはずだが……初めて四月一日と会った時からそうだった。突然、初対面にもかかわらず…跳び蹴りをかましてきやがったんだ。

何が気に入らないのかはわからない。

……ただ、四月一日は感情表現が苦手だ。

四月一日は素直になれないだけじゃないのか…もしかしてコイツと両思いなんじゃないかと最近思いはじめていた。




「どうして…わざわざ休日に俺の所に来たんだ。お前は俺が嫌いなんだと思っていたが?」



貰ったクッキーを残りの数など気にせずにぼりぼり食べながら四月一日に問う。

「か、勘違いすんな!俺は別にお前に会いたくて来たんじゃねーよ!」

「なら、どうして…」

半分言いかけたところで、ふと思い出した。

そういえば今日は学校で女子達がえらく騒いでた。

下駄箱を開けるとまるで漫画の様に沢山の手作りチョコレートが落ちてきたり、教室に入ろうとすると待ち受けていた女子達がこぞって俺にそれを渡そうとしてきた。

一息ついて自分の机につくと、中から溢れ出たチョコ達が顔を覗かせる始末。


はっきり言っていい迷惑だ。


そんな調子だから流石の俺も家に着いた頃には疲労困憊。

さっさと忘れたい行事の一つに入っている。



だから夜になった今は、すっかりその事を忘れていたのだ。

「まさか…バレンタインのクッキーを渡すために…?」


ついてはいけないところをついたか…

四月一日の顔はみるみる真っ赤に染まった。

「ち…ちちちちがう!別に、バレンタインなんて知らなかった!」

「ならどうしてクッキーなんて…」


「気分で作ったクッキーが余っちまって…それで…」


「そうか…」


どっちが真実かは明白だが…あえて問うことはせず、黙って四月一日の頭を撫でた。

今は何を言ってもどうせ逆鱗に触れるだけだと思ったからだ。

そんな風に素直になれない四月一日が可愛いと思ったが、そんなこと死んでも言えない。


俺は精一杯の笑顔で頭を撫でて感謝することしかできなかった。


「なっ…////頭…さわんな!!」

「わざわざ…すまんな。けど、口直しが欲しいんだが」

四月一日は俺の手を慌てて払いのけてそのまま強く俺の手の甲をつねった。

「オマエなぁ…どんだけ自己中なんだよ!身をわきまえろよ阿呆」

そう言い終えると更に俺の手をつねる力を強くして、遂にフンッとそっぽを向いてしまった。



「四月一日…甘いもん食った後には、口直しが必要なんだ。俺が甘いもん苦手だって知ってるだろ?」

「だから甘さ控えめに作ってやったぞ!?オマエ味覚おかしいんじゃ…………んっ!」


四月一日が答える前に、唇でその続きを塞いだ。


「ふっ……んぁ…百目鬼!」

「…口直しだ。」

急に口づけをしたせいで四月一日の目は涙目になって、顔は真っ赤になっている。

本当にこういう時のコイツは反則だ。
素直になれないところも、本当はキスを待ってたところも…全部が。


「…もうぜっっっっっっったいクッキーなんか作らないからな!!そして百目鬼、オマエの家にも二度と来ないからな!!!!」

「まぁそう怒るな。もう夜も遅いし…泊まってけよ、君尋」


ほら、わざと名前を呼べば…また嬉しそうな顔をする。我慢して隠そうとしてもすぐわかるんだ。

なんて呑気に考えていると、意地っ張りで可愛いそいつから鉄拳をくらった。


「……風呂…借りるからな!そんでもって俺の背中、洗えよな!」


「ふっ…。ああ…勿論だ。」


恥ずかしがる四月一日を押して、俺たちは風呂場に向かった。



「…しかし……………だな。」

「ん?何か言ったか?」

「いや…なんでもない。」

















口直しのつもりでした口づけは…
クッキーよりも随分甘く感じた。










(よし、これはやっぱりもっとすごい口直しが必要だな…!)
































END


→全然懲りてない百目鬼くんです。
(ノ´∀`*) この後お風呂場でいちゃいty…wwww

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