書物庫4(基本幕末作品・慎ちゃんメイン)

□ワンこ×ワンこ物語改(以×慎ちゃん:武市さん浮謔)
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*あまりに有名な絵本のタイトルをもじってますが、児童書とは縁も所縁もございません。


〜もしも、以蔵が武市先生の萌え台詞を立ち聞きしてしまったら〜

『添い寝』篇


「どうしたの、以蔵くん?」

朝稽古の後はいつも黙々とご飯を食べる以蔵くんが、今朝はまだ一膳目も食べ終わっていない。

「お腹の調子でも悪いの?食べないならそのめざし、頂戴」

俺が以蔵くんの膳に箸をのばしても、以蔵くんの反応がない。

「以蔵くん?」

「なあ、慎太」

「うん」

「〈添い寝〉って何だ?」

ぐほっ、げほっ、ごほっ。俺は危うくご飯を喉に詰まらせて、窒息死しかけた。以蔵くんが呆れ顔で、お茶の入った湯呑みを手渡してくれた。

「飯はよく噛んで食べないと、背も伸びないぞ」

「余計なお世話っス!そもそも誰のせいっスか!」


俺が涙目で睨むと、以蔵くんは驚いたような表情をして、

「誰のせいなんだ?」

逆に真顔で聞き返された。俺はお茶でご飯を流し込み、何とか生還できた。

「大体、いきなり〈添い寝〉って何だ?、じゃないっしょ。一体何を惚けてるんスか」

「惚けているつもりはないが」

「〈添い寝〉なんて子供でも知ってるっス!わざわざ人に訊くほどのことじゃな…」

い、と語尾を続けかけてふと、俺は思い止まった。武市さんに心酔している以蔵くんのこと、朝な夕なに剣の稽古に明け暮れて、そういう人と人との基本的なかかわり合いに関する知識が欠落しているのかもしれない、と。

「そうか、やっぱり特に珍しいことじゃないんだな。武市先生があいつに言っていたのを聞いて…、先生の言葉は全て記憶しているつもりだったが。まだまだだな、俺は」

―っていうかそれ、色々まずいよ以蔵くん!
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