屑箱

□ハッピーアワー
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「いやぁ、夏ですねぇ!素晴らしいデート日和だ」

風が通り抜け、風鈴が涼しげな音を奏でる。

『うん…そうだね』

陽も暮れ、眼下に灯るいくつもの光が幻想的に揺れる。

『だけどね、』

ジュウ〜と何かが焼ける音がし、香ばしい匂いが辺りを包む。

『なんでもんじゃ焼きなわけ…?』


今日は正十字学園年に一度の夏祭りだ。
金持ち学校なだけあり、外から呼び寄せたたくさんの屋台が賑わいを見せている。

そんな中、メフィストとナマエはその夏祭りの会場の上…小さなお店の一角にいた。


デート=メフィストと夏祭りに行くとばかり思っていたナマエは不満たらたら。
それらしさを醸し出しているのは2人が着ている浴衣のみだった。


『私は夏祭りに行くと…』

「何を言うのです!屋台の料理とはボッタクリにも等しいのですよ。それに比べ、チーズ豚モチもんじゃは値段に相応しく味も最高!!」

『屋台呼んだのメフィストでしょ…』


階下では多くの人が賑わいを見せており楽しそうに騒ぐ声が聞こえるというのに…いくらメフィストと2人といえど何が悲しくて夏祭りを傍観しなくてはいけないのか。


「まぁまぁ、そう落ちこまないでください」

『落ち込まずにいられないっての…』


楽しみにしてたのにー…夏祭り…
…焼きそば、わたあめ、たこ焼き、かき氷←

食い意地の張った思考を追いやり呑気にもんじゃ焼きを口に運ぶメフィストを恨めしくじろりと見てやれば、視線に気付いた彼がいっそ清々しい程の笑顔で…

「おや、そんなに私の食べているものが欲しいんですか。ナマエも食い意地張ってますねぇ」

なんて抜かすから、思わず顎髭を引っこ抜いてやろうかと思ったよ。うん。


「まぁ、冗談はさておき。ナマエの不機嫌もすぐに治るでしょう。私が何も考えずにこんな場所に連れてくると思いますか?」


正直なことを言えば『思います』だ。


「あぁ、もうそろそろですね」


そんなメフィストの言葉に訝しげに眉根を寄せ彼の横顔を見る。
すると後方で大きな爆音がした。


『う…わぁ!!!』


花火だ。
色とりどりの花火が夜空を飾る。

一際高い所に立ち周りに遮るものがないここはまさに特等席だ。


メフィストも、一応考えてくれてたんだと思うと嬉しくなった私は現金なんだろうか。





ハッピーアワー

(機嫌は治りましたか?)
(…治りました)
(それは良かった!!この場所を貸し切ったかいがありました)


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