屑箱
□Hug Hug one day
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「さぁ、ナマエ。私にハグしてください!」
『………はぃ?』
祓魔塾の授業を終えシュラちゃんと共に職員室に帰ると、両手を広げて待ち構えるメフィストがそこにいた。
いつものピエロのような格好ではなく彼愛用の(私にはよく分からない何かのアニメ?の)浴衣にその身を包んでいる。
彼が浴衣姿で校内に来るなど珍しい…いや、今は珍しいとか言ってる場合じゃなく、頭でもおかしくなったのかと呆気に取られ固まるシュラを思想の端に追いやり再び眼前のメフィストを見据えた。
「さぁ、ナマエ。遠慮せず私に抱きついてください!」
『い・や』
「つれないことを言わないでください。私とナマエの仲じゃないですか」
『私がいつあなたとそんな仲になったんですか』
「出会った時からでしょう☆」
そう言って、なんの承諾もなしにメフィストは逃げようとする私を捕まえてその腕の中に閉じ込めた。
『はーなーせー!』
どうにかして逃れようと抵抗するが、如何せん男女の体格差がありすぎる。
祓魔塾の職員室には今日に限って何人もの講師(祓魔師)がいて、その視線が痛い。痛すぎる。
『ちょ……!本当に離してっ』
「何を言っているのです。今日は8月9日、つまり"ハグの日"です。1年で1日、人前で抱き締めても文句を言われない日なのですよ!私も長いこと物質界にいますが、あなたがいる今年ほど今日が素晴らしく感じたことはありません」
だからって……!!
シュラちゃんに助けを求めようにも「雪男んとこ行ってくるわーにゃはは、ナマエ頑張れ」とか言って行っちゃうし、懐の愛銃を抜こうにも召喚しようにも、全て元凶のメフィストが(密着してくるから)邪魔になって出来ない。
「さぁ!!ナマエも私の背中に腕を回して」
『だが断る!』
「恥ずかしいのですか、分かります」
『違うし』
本当に自意識過剰すぎて困る。
変な奴に好かれたもんだと半ば諦めながら、メフィストの腕の中で精一杯の抵抗を試みた。
Hug Hug one day
(メフィスト……)
(はい、なんでしょう!)
(…一回死んで来い)
(ごふっ…!!)
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