屑箱
□What is yours is mine, what is mine is my own.
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教え子と技巧について語っていたら、彼らの顔が何やらサッと青ざめ、次いで勢いよく立ち上がったかと思えばそれはそれは見事な敬礼を披露した。
視線は私を通り越して遠くを向いている。
つまり、当たり前だけど、私に対しての敬礼ではない。
では、誰がいるというのか。
嫌な予感がするから私は振り向かない。
振り向いてしまったら、そこで何かが終わる気がするから。
「…分かってて無視するとはいい度胸してるなナマエ、あぁ?」
冷や汗が流れる。
あー…どうして嫌な予感ばかり当たるかなぁ!本当にやめてほしいんだけど!!
振り向かなくても終わりそうだ!
仕方なくギギギッとロボットのように振り向いた私の視界一杯に、無愛想で眉間に皺の寄った仏頂面が広がる。
「…あはは、リヴァイさん…なにがそんなに不機嫌なのかなぁ?」
「不機嫌じゃねぇ。ただお前にイライラしてるだけだ」
いや、ね、リヴァイさん。それを不機嫌って言うんですよ。
この男、人類最強と称される我らが調査兵団の兵士長様は何を隠そう私の恋人である。
どうして付き合うことになったのか私にもよくわからないけど、とりあえず言うならば「逃げられなかった」というところだろうか。
話を戻すが何故リヴァイさんがここに、訓練兵団にいるのか。
彼は今日非番ではなかったと思うのだが。
「あぁ?来ちゃいけねーかよ」
「…いやー……あ、そうだ。私まだ生徒たちとやることあるからまた明日…」
「おい、お前ら。こいつ借りてくがいいな」
「「もちろんです!」」
「裏切ったな!?」
「「兵士長には逆らえません!」」
薄情ものめ…!
可愛い教え子たちにあっさりと裏を返され、首根っこを掴まれズルズルと引きずられていく私。
どこに向かうのかと思えば、リヴァイに引きずられて放り込まれたのは見慣れた自室だった。それにしても扱いが酷い…
「うぅー…私のこと好きならもっと優しく扱ってくださいよー〜」
「優しく…?」
「はい!もっと恋人らしく…」
「却下だ。気持ち悪い吐き気がする」
「(白目)」
というか!ホントに何しに来たんですか。
勝手知ったる他人の家。
我が物顔で部屋を物色し、私の愛用のマグカップを取り出したかと思えばあろうことか自分の分のお茶だけ入れて我が家に一つしかないソファに腰を降ろしやがった。
「なんでそんなに清々しいほど図々しいんですか!」
「ナマエが俺のものなら、お前のものも俺のものだ」
「私はリヴァイさんの物じゃないですー」
「あぁ?」
ひぃっ!?恐ろしや鬼の形相。
「た、確かにリヴァイさんに告白されて付き合うことにしましたけど…それとこれとは話が別です!」
恋人、と言ったって恋人らしいことをしたことはないし…形だけのようなものだ(と私は思っている)。
私は確かにリヴァイさんの色に染まりつつあるけど…いつ別れを切り出されるかも分からないし。
そう、ボソリと呟けばリヴァイさんから禍々しいオーラが…
「ほぉ…俺もナメられたもんだな」
「わわっ」
「…色気のねー声だな」
いきなり腕を引かれてベッドに投げ飛ばされる。
次いでリヴァイさんが覆い被さるように体重を掛けてきて、私に逃げ場はない。
「ちょ、リヴァイさん…おーもーいー!!」
「……うるせえな。喚くな」
ムードもクソもねぇ…なんてリヴァイさんが不機嫌に言った。リヴァイさんからムードなんて言葉が出るなんて……あ、また眉間に皺寄ってる。
「心配するな。これから散々"鳴"かせてやるから」
え………
「お前が俺のものだと分からせてやる。なぁ…ナマエ」
「…遠慮ネガイマス」
「遠慮するな」
「いやいや…まだ仕事残ってますし…」
「諦めろ」
「明日の授業に支障が…!」
「一度あのクソガキどもに分からせるためにも休め」
横暴だな…!
でも、そんなリヴァイさんに染まりつつあって本気で拒否出来ない私も大概である。
What is yours is mine, what is mine is my own.
翌日ーーー…
生徒で賑わう訓練場。
「うるせぇクソガキ、早く持ち場につけ」
「え…リヴァイ兵士長…!?」
「なんで人類最強がここに…?」
「ナマエさんは…?」
「アイツは休みだ。俺が代理でやる。
おい、始めるぞ…昨日ナマエと一緒にいたやつ出てこい」
「「……っ(殺られる…!)」」
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