屑箱

□toi et moi
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とある非番の日。
公私ともにパートナーである私とリヴァイさんは、毎月決まった日に一緒に団長から休みをもぎ取りお出掛けをする。それは私が「恋人らしいことをしたい」と言った故の行動であり、リヴァイさんも満更でもなさそうだから私は甘えてしまっている。
その証拠に、私と手を繋ぐリヴァイさんの眉間には少しだけ皺が寄っている。といってもまぁ、私からしたら照れ隠しのような可愛いものだけど。

リヴァイさんは、大人のデートって感じの洒落たジャケットにパンツスタイル。私は彼に見合うように、普段では履く機会のないヒラヒラのワンピースにちょっとだけ高めのヒールで。メイクはいつも通りだけど、髪は少しだけ弄ってみた。ヒールを履いたところでリヴァイさんの身長とやっとこさ並ぶぐらい。履きなれないヒールにふらつく足で、リヴァイさんにすがり付いてみたり。

「…履きなれないなら履いてくるな」

そうリヴァイさんは怒ったように言うけど、その顔は締まりがない緩んだ顔をしていた。

「こういう格好の私は嫌い?」

「…別に」

「…なに?ちゃんと言ってくれなきゃわからないよ」

「…嫌いとは言ってねぇ」

ぷいっとそっぽを向いて、ちょっとだけ頬を染めて。普段の彼の「兵士長」の姿は跡形も見られなくて。
私だけが知っている彼の素顔に優越感が支配する。

「おい、ナマエ」

「な、に…っきゃ!」

見馴れぬ路地に入った所でキョロキョロしていた私をリヴァイさんが呼び、次いでいきなり手を引かれた。

「俺から離れるな。迷子になるぞ」

「もういい大人なんだから迷子になんてならないよ!」

「いいから離れるな……他の男が寄ってくると困るだろ」

リヴァイさんは普段からあまり言葉にしないから、こうやってちゃんと声に出して言われるとなんだか私まで照れくさい。
なんだか恥ずかしくなって下を向けばリヴァイさんは呆れたように返した。

「…なんだか、素直なリヴァイさんって何度接しても慣れないよ」

「あぁ?」

眼光が鋭くなる。別に、素直な彼を否定したわけでもバカにしたわけでもないけれど。どうやらリヴァイさんは私の一言がお気に召さなかった模様。

「"恋人らしいことをしたい"っつったのお前だろ」

「ご、ごめん…今のはそういう意味で言ったんじゃなくて」

ただ、嬉しいんだよ…やっぱり言葉にされるのは。

ボソリと呟いた私の言葉は、果たして彼に届いただろうか。
わからない、わからないけど。

「…もたもたしてると置いてくぞ」

ちょっとだけ赤い頬に逸らされた視線。
照れ隠しだと思って、笑って見逃してあげようか。



toi et moi

リヴァイさん行きつけのお洒落なバーに、目一杯背伸びしたちょっと度の強いカクテル。
カウンター席で隣に座り同じようにカクテルを口に含むリヴァイさんの手には、シンプルだけど一際強い輝きを放つシルバー。それは、ここに来る前に買って交換したペアリングだ。

きっと恥ずかしがって兵団内ではしてくれないんだろうけど、あなたとわたし、見えない絆で繋がってるからそれでも構わない。


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