屑箱
□英雄王と体力バカと凡人と
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カリカリ……
執務室にひたすらペンの走る音が聞こえる。
カリカリ……
その音は、まるで機械のように。
一定時間なったと思えば一瞬止まり、またひたすらに響き渡る。
「……あとは…税政の書類と、近隣諸国の報告書…それから教育法の改正案に……ライナとフェリスからの勇者の遺物の報告書…」
「なぁ、シオン。まさかとは思うが、お前は今読み上げた全てを俺にやらせようとはしてないよな?」
「はは(笑)当たり前だろ?」
「…そうだよな」
「君の他に誰がいるんだい?」
「そっちかよ!!!」
シオンは自分の隣に座る親友ににっこりと微笑んだ。
それは有無を言わせぬ悪魔の笑み。
男はヒクヒクと顔をひきつらせ、諦めたように机にうなだれた。
「俺はな、シオン。これでもただの一般人だ。ライナと違ってお前の仕事を手伝ってやることは出来る。出来るが、さすがに完徹10日はキツいぞ」
「大丈夫だよ、君はそんなにやわじゃないだろう?キョン」
「過大評価しすぎだ」
シオンとの付き合いは長い。
まぁ、元々幼なじみだしな。
俺らはこのローランドの王となったシオンに駆り出され、王宮にやってきた。
あ、"俺ら"というのは…幼なじみがもう1人いるからな。
「そうだ、シオン。スザクはどうしたんだ?クラウと出てってから随分立つんじゃないか?」
「スザク?あぁ…あいつなら…」
ダダダダダ…
バタン!!!!
「たっだいま〜!」
「「スザク!」」
「あ、キョンじゃないか」
凄い勢いで扉が開いたかと思えば、そこにいたのはスザクだった。
噂をすればなんとやら、だ。
「おかえり、スザク。遠征ご苦労だったな」
「向こうは特に変わったことはなかったよ。だけど…」
「スザク、どうした?」
「…シオン、君また徹夜しただろ。それも多分、僕が出てったその日から。結局終わらなかったのかい?」
「あぁ。俺も完徹10日だぞ、少しは休ませてくれよ」
俺とスザクがシオンをジと目で見る。
シオンはうっと後ずさる。
悪いな、シオン。
シオンはライナの扱いが巧いのかもしれないが、俺らもシオンの扱いはなかなか長けてるつもりだからな。
スザクと顔を見合わせる。
お互い考え込んでいることは一緒のはずだ。
アイコンタクトで頷くと、俺は立ち上がりシオンを壁に追い詰め羽交い締めにする。
「スザク、」
「分かってるよ」
「ちょ…待つんだ。スザク、キョン!?何を…うわぁ!!」
スザクがシオンの足をしっかりと抱え上げる。
そのまま、シオンを寝室に放り投げた。
「今日は休んで」
「俺もそれがいいと思うぞ」
そうだそうだ。
とりあえず今日は休め。
俺らの王が疲労なんかで倒れたら大問題だからな。
「…しょうがないな。じゃあ、お言葉に甘えて」
「8時間後に起こしてやるから」
「後は僕らに任せてよ」
さて、もう少し頑張ってみるか。
大きくのびをして、スザクと共に再び書類と向き合った。
英雄王と体力バカと凡人と
(なぁ、スザク………スザク?)
(………zzz)
(ダメだな、こいつ寝てやがる)
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