いち
□鳥籠の少女
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@逃げて、逃げて、
初めて貴方を見たとき、その凛とした姿に一目で心を奪われた。
いきなり生徒会役員へと指名されて始めは困惑ばかりだったけど、今なら、人見知りで人間が苦手だった私は変わった…変われたのだと言い切れる。
貴方に出会って1年が経った。
月日が過ぎるのはあっという間で、日に日に貴方に惹かれていくのが分かる。
「おーナマエ、今から陽日先生んとこ行くんだが、お前も来い」
『え?きゃっ…!!会長、行きます行きますから!』
手を離してください、このままだと転びそうです。
そう訴えれば、彼は――不知火会長はニコリと優しい笑みを浮かべ一言。
「嫌だ」
『えぇ!?』
「諦めて俺に手を繋がれてろ」
ドキリ、熱くなってドクン。
この心臓の高鳴りまで聞こえてしまいそう。
どれだけ想ったって結ばれることなんか無いのに。
トマレ、ワタシノ心臓…
「なぁ、ナマエ」
『…なんですか、不知火会長?』
「そろそろ名前で呼べよ」
生徒会に入ってもう1年になるが、未だに会長のことは苗字呼び。
別に、名前で呼ぶのが嫌だとか苗字呼びに慣れてしまったとか…そういう訳ではない。
これはあくまで、自主規制。
私が私を保つ為の…自分勝手に作った壁。
『それは………』
「呼んで欲しいんだよ、お前には」
あぁ、何故貴方はいつも嬉しいことを言ってくれるんですか?
止めてください。
私は貴方が好きなんですから…そんなこと言われると………
『か……かずk「ナマエ、ここにいたんだね」っ……!』
「探したよ。夜久さんから今日は生徒会は休みだって聞いてたんだけど…?」
『…………それ…は…』
私に言葉を…会長の名前を呼ばせまいとしたなんとも絶妙なタイミングで彼は現れた。
…やはり、私は貴方から逃げることは出来ないんですね、誉さん。
それでも私は、鳥籠の人。
あぁ、誰か。
私を攫ってくれたなら……
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