屑箱

□She is my little princess.
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「鞍馬さん」

ナマエは俺の名前を呼ぶと駆け寄って腕に抱きついてきた。名前は未だに"さん"付けのくせに、行動はこれだから困る。っつかこれで天然ってどういうことだよ。天然とか尚更たちが悪い。

「ねぇ、鞍馬さん!」

「なんだよ」

「ちょっと、屈んで」

小さく手招きをするナマエの言葉に、俺よりも幾分か小さいこいつの背丈に合わせて腰を折る。癖っけのある猫毛がふわりと揺れた。ちゅ、っと小さなリップ音がして彼女が俺から離れる。それは一瞬の出来事で、残ったのはニコニコと笑うこいつと頬を押さえて赤くなった俺だけだ。

「ナマエ……!」

「ふふ、鞍馬さん、だーいすき」

「っー〜!」

本当に、こいつは。
制服のスカートを翻して、ナマエは何事もなかったかのように歩き出す。なんで俺が照れてんだよ、悔しい。これは仕返しをしないと俺の気が静まらねえよ。
先を行くナマエの腕を掴んで引き寄せる。背後から抱き締めるように腕の中に閉じ込めてやれば流石のこいつも慌て………

「鞍馬さん?どうしたの?」

………………なかった。
おいおい、俺はアイドルだぜ?彼氏だぜ?それなのにドキッともしないって。

「おい、ナマエ」

「なぁに?」

「なぁに?じゃねえよ!」

「変な鞍馬さんー」

あぁ、ダメだこいつ。勝てる気がしない。ムカついたから腹いせに頬を引っ張ってやった。いひゃい?当たり前だっつーの。痛くしてんだから。
ここが学校じゃなかったらこのまま襲ってやるのに、なんて物騒なことまで考えて首を振る。
……そうだな、学校じゃなかったら、なんて言わずにこのまま襲ってやろうか。

「ナマエ…覚悟は出来てんだろうな?」

「へ?」

「お前にはお仕置きが必要なようだしな」

「なんで?」

きょとん、と。まったく分かっていないナマエにキスをする。
理由?そんなもん、俺を翻弄したからに決まってるだろ。



She is my little girl.

(くくく鞍馬さん!)
(なんだよ、今さらやめねえよ?)
(そうじゃなくて!うしろ!蛇がいます!うわー蛇なんて生で初めて見ました!)
(…………はぁ。(ズレてる…しかもあれ奈々生ちゃんとこのじゃね?くそ蛇がっ))



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