アイシテル

□バカは風邪をこじらせる
2ページ/2ページ



しばらく経ってから、いきなりノックも無しにベルとマーモンが入ってきた。


遠慮なしに開かれた扉から少し変な音がしたような気がする。


「ししっ、王子がわざわざ見舞いにきてやったぜ、カスアーロ」

「誰がカスアーロだぁ」



この王子様はもっと気の利いたことは言えないのだろうか。


「体調はどうだい?」

「おぉ、大分良くなったぜぇ」


そんなベルの腕の中から、心配をしてくれるマーモン。


「なんだ。まだ悪いようだったら薬売ろうと思ったのに」


前言撤回。

やっぱりマーモンはマーモンだ。



「うしししっ、やっぱりボスからの薬が効いたんじゃね?」

「実に残念だね」

「あ゙?どういうことだぁ?」


ボスからの薬?

ボスが薬を買ってオレにくれたのだろうか?


「もう二人とも!また面倒なことになるからお止めなさい」


「別にいいんじゃね?」

「スクアーロも聞きたいんじゃないのかい?」


「だから、なんの話だぁ」


「「ボスがスクアーロに口移しで薬を飲ませたこと」」




「………………はぁ゙!?…っ!ゲホッ…ゲホッ…」


「あらあら、スクちゃん大丈夫?」


「ししっ、むせてやんの」

「むせるのとは少し違うんじゃないの?」

「どーでもいいし!」



こいつらなんて言った?


ボスが、



口移し?!




「あのねスクちゃん。あなた倒れたとき結構ひどい状態で、薬もまともに飲めない状態だったのよ。困っちゃって、点滴にしようかって話してたときにね、」


「いきなりボスが薬を口に入れて無理矢理飲ませたってわけ」


「……な゙っ、な」



「ホントびっくりしたよ」



ありえねぇ


マジでありえねぇ!



「それでみんな大声だして驚いちゃったものだから、ボス怒っちゃってね」


「ぜんっぜん顔合わせてくれなくなっちゃったし」


「…………」


あまりの事実に言葉が出ない。

想像しただけで顔から火が出そうだ。


「さぁさぁ、スクちゃんもゆっくり休みたいだろうし、私たちは戻るわよぉ」


「「はーい」」


「はぁ!?ちょ、お前ら!」


「じゃあゆっくり休むのよ」


それだけ言うと、さっさと戻ってしまう三人。


バタンと扉がしまり、一気に部屋が静まる。



「なんなんだよぉ……」



呟いた言葉はすぐに静寂に呑み込まれかき消される。



こんなこと、知らない方が良かったと思う一方、



少し嬉しいと思っている自分がいて、




心底そんな自分が嫌になった。























馬鹿は風邪をひかないと言うけど、




それは、風邪をひいても馬鹿は気づかないだけだと言う。





そんなオレは、今日初めて風邪をひき、




ボスが少し優しくなることを知ってしまった。






風邪をひくと辛いが、







たまにはいいかもと思ってしまったり……







(君には悪いけど)
(たまに風邪をひきたいと思ってしまったんだ。だから)

(僕はこれから賢くなれるように)

(頑張ります)





end



その考えからしてお馬鹿なんだけどね(笑)
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ