短編
□あの笑顔が消えない
1ページ/1ページ
好きなタイプは?ときかれると、自分は必ずおしとやかでおとなしい子、と答える。
だからうるさくて元気過ぎる女子は苦手だ。
ある程度明るくて元気というのならまだいいが、うるさ過ぎるのはやだ。
まあ静か過ぎるのも嫌だけど。
「えー……っと……成…神くん…?」
そんなことを考えていると、後ろから声がした。
藍色の髪に赤ぶちの眼鏡。
こいつは確か……
「…お…と…なし………さん…?…鬼道さんの妹の。」
「うん!音無春奈!!……嬉しいな……名前覚えててくれて……」
一瞬音無さんの顔が赤らんだ気がしたが気のせいだろう。
――悪いけど、苦手かも…。
なんかはきはきしてそうだし。
「あっあの……さ…」
「?なに。」
「その…タメ口でいい、よ!同じ一年だし。…それに……私成神くんと仲良くなり、たい、し…」
最後のほうが声が小さくて聞こえなかったけど、言われてみれば同級生だった。
鬼道さんの妹ってこと自体で結構気を使うけど。
「じゃあ、タメ口で…「あと!」
音無さんは見事に俺の言葉を遮った。
「音無さんはやめて!」
「は?」
「音無さんじゃ、いかにもきをつかっている感じじゃない。それにせっかくタメ口になったのにさん付けって変だし。」
「えーっと…じゃあ音無、で……」
俺が仕方なく呼び捨てで呼ぶと、音無はずいっと顔を近づけてきた。
「ありがとう!成神くん!!」
音無はパアッと笑った。
ヤバい。かわいいかも…
「それじゃあね。成神くん。」
「じゃっじゃあな…」
走り去っていく音無から目が離れない。
“ありがとう”
あの笑顔が何度も頭の中に思い浮かんでは消える。
「これって…」
鬼道さん、すいません。 俺は音無に恋をしてしまいました。
お題配布:確かに恋だった