NOVEL
□線香花火
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ジワジワと汗が噴き出す。
アリがキラキラと光る花火の下を歩いていた。
「ほのか、終わったらバケツ持ってきて」
「うむ」
蚊がうろつく夜の中、私は燃え尽きた花火でいっぱいになったバケツを持ち上げた。
「あ!淳の首に蚊がいる……!」
「え?ちょ、叩け!」
そう指示されて思わず首をバチンと叩く。
しかし、それと同時に持っていたバケツがひっくり返った。
「あっちゃー……!やってしまった……!」
「ばかやろーめ。……ったく、拾え拾えー」
水でビシャビシャになった土が跳ね返って足下を濡らす。
……泥だらけだ……。
本当にやってしまった自分のバカ。
「っはあー……花火って終わると急にむなしくなるよなあ」
「何、いきなり?」
坊主頭をわしわしと掻いて淳はしゃがんで花火を拾う。
「案外、あっけなく終わるんだよな」
淳が何かと重ねてものを言っていることは簡単に分かった。