足立 一×香川 美咲
□会
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「この人も」
「この人も」
「ちっがーうっ」
学校に向かう朝の電車で俺は内心叫ぶ。
電車の中には通勤ラッシュの時間のせいで人が多い。
俺はそんな人たちの首筋を盗み見してたりする。
別に、変なことを考えている訳じゃないっ。人を捜しているんだ。
あの人を・・・。
俺・・・足立 一(あだち はじめ)は前世の記憶が残っている。
俺は前世で生き別れたあいつを、あの人を見つけたくて、毎日こうやって電車に乗っては印を探す。
印とは、あいつと決めた目印のこと。来世で会ったときの目印にしようって決めた目印。あいつの首筋にある、蝶みたいなあざと、俺の日本人にしては珍しい青みがかかった灰色の目。
「でも、探すって言ってもなー」
日本の人口を考えると簡単な話じゃない。
でも何年かかってでも見つけてやる!
その時、電車ががたっとゆれたせいで一の体が大きくゆらいだ。
「おわっ?!」
そのまま前にいた人にぶつかってしまった。
「わっ!」
「すいませ・・・・んん?!!!!」
痛そうに立ち上がるその人の首筋に蝶のようなあざがあるのが見えた。
まさか・・・!
「あのっ」
「はい・・?」
怪訝そうにこちらをむいたその人は・・・
「な、何ですか?」
同じ制服を着た男子生徒だった。
しかも今時瓶底メガネ!!!
長めの黒い髪はもしゃぁ〜と顔を隠している。
「い、いや、あの」
一がどうしたものかと困っていると、瓶底君も困ったようにおどおどし始めた。しかし俺の顔を見ると急に口を開いた。
「あ、足立一君・・・ですよね?」
「そ、そうだけど。なんで俺の名前??って同じ学校か。」
一がそう言うと、瓶底君は寂しそうに笑った。
「同じクラスなんですけど・・・一応」
「えええええっつ〜〜〜??!!!」
やべ、俺超失礼じゃん!!!!
「ごめんっっっ」
「いいですよ。なれてますから。それより、さっきはどうしたんですか??」
「ああ・・。あのさ!!」
そこで言葉が止まる。
男に首筋見せてください!なんて変じゃないだろうか。
いや、変だ!!!
「あの、その・・・」
「???」
ええい、もういいや!
「首、見せてくれないかな」
「は・・・?」
さすがに瓶底君も驚いた様子で、固まっている。
「だめだよね・・・」
俺、変態みてぇー
「ぷっ」
「へ?」
「ふふふっ、あははっっ」
ふきだした瓶底君がこらえきれずに笑った。
「な、なんだよ!!」
すねたように一がつぶやくと、瓶底君はあわてて口を開く。
「す、すいません!なんていうか、足立君って、意外とおもしろい人だなぁ、って。あ、す、すいません!!」
「なんだ・・・」
よっぽど面白かったのか、瓶底君のめがねがずり落ちそうだった。
「あ、えっと、首でしたっけ?なんでそんなとこ・・?」
ひとしきり笑ってから瓶底君が言った。
「ま、諸事情あってな。」
「そうですか、変わってますね。」
そう言って瓶底君はもしゃもしゃの髪の毛をぐっと手でまとめると、うなじをあらわにした。
「おっ・・・」
そうすると首筋にあるその蝶のようなあざがはっきりとあらわになった。
俺がずっと探していたしるし。