足立 一×香川 美咲 

□忘
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「おー王子おはよーっす!!」

「おっす王子!」


「おはよう、みんな」

教室に入ると、クラスメートたちが次々とあいさつしてくる。
なぜか俺は高校で王子と呼ばれてる。そう言えば、中学でも呼ばれてた。なんでだ?


「おはよう、一」

席に着くと青が話しかけてきた。俺と青は小学校から一緒だ。こいつは俺のことを王子とは呼ばない。

「なー青。」

こいつに聞いてみるか。

「ん??」

「なんで俺って王子って呼ばれてるのかな?」

そう聞くと青が固まった。

「・・・」

「え?何で固まるんだよ」

「・・・おまえ、気づいてなかったのか??」

「はぁ??」

何にだよっ

「あはっ。さすが一!」

そのまま青はひとしきり笑った。まったく、失礼な奴!!

「なんなんだよ!!」

「わり。おまえさ、中学校の時、ファンクラブがあったの知ってる???」

「は??」

初耳だ。俺のファンクラブ??ありえない。

「そ、そんなわけないだろ!あったら気づいているはずだろ!?」

青は深く深くため息をついた。

「あったよ。おまえが気づいてないだけ。ていうか、俺にもあったけどなー」
「えっ?!まじかよ」

それも初耳だ。
まぁ、確かに青は長身で顔だって、男の俺から見てもわりとかっこいいと思う。なんてたって良い奴だしな。

「俺とおまえの・・・ファンクラブ?」

「おう。」

「・・・そっか。分かった。俺に気を使って細々と活動していたんだろ!」

だから気づかなかったんだ。

自信満々にそう言うと青が「あほか」とでも言うような目つきでこちらをみた。

「細々なんてもんじゃなかったよ!おまえ、忘れたのか?季節ごとにで、ファンクラブ主催の合同お茶会とか会ったじゃん」

「あ・・・」

それは覚えているかもしれない。たまに青につれられて行った教室には、やたらとお菓子とお茶と女の子がいた。
あいつのことばかり考えてたから気づかなかったんだな・・・。


「それで俺とおまえはみんなの王子様ってことになって。それがクラスに広まって、男までそう呼び始めたんだよ。
きっと中学で同じだった奴らがこの学校でそれを広めたんだな。」

「はぁ・・・」

分かったような、分かってないような。

まてよ??

「おまえも王子だったんだろ?なんでおまえは王子って呼ばれてないんだよ!」

それを聞くと青がこれでもかって言うほど嫌な顔をした。

え、なにその顔。

「それ、言わなきゃだめか??」

「うん」

聞きたいしな。

興味津々でうなずくと、青はしぶしぶと口を開く。

「そのうちにファンクラブのなかで俺たちで妄想する人が増えてさ。」

「妄想??」

「そ。俺ら、仲良いからわりといつも一緒にいただろ?」

「そういえばそうだな」

「だから俺とおまえがそういう仲なんじゃないかってさ・・・」

そういう仲・・・・・

「っっ〜〜〜〜〜!!!!!???」

「しかも設定でいうならおまえは王子で俺は執事なんだと。あ、ちなみに王子(攻め)×執事(受け)だから」

「〜〜〜〜〜〜〜????!!!!」

知らなかった。本当に知らなかった。俺と青でそんな妄想がされていたなんて。

「そんで俺は王子とは呼ばれなかったわけ。だからって執事って呼ばれていたわけじゃないけど・・・まったく、失礼だよなっ。(俺は受けじゃねぇっつうの)」

「??おお・・・」

「じゃ、またなっ」

自席に戻る青を見送ると、青の隣に座る瓶底君とばっちり目があった。

「〜〜〜〜〜」

どうしていいか分からなくなって思わず目をそらした。
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