SS

□清潔な敷布
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シーツは洗い立てなのか、仄かに花の匂いが香った。が、すでにソレは依れて皺が寄っている。
事後の気だるさが漂う中、山崎はポツリポツリとあやめに向かい呟き始める。

「猿飛さんてさ、自分の身体、無頓着だよね。わりと傷あるし」

つ、と指の腹であやめの首筋に触れる。

「好きじゃないもの。手入れなんて」
「くの一なのに?」
「色気なんかに惑わされるレベルじゃ、あたしの敵じゃないわよ」
「確かにね」
「あなたは、ま、腹筋はいちおあるみたいだからよかったけど」
「見苦しくなきゃ俺的にはいいかなって」
「あなたもナルシシズムないわね」
「身体にはね」
「顔にもでしょ?…そもそも私に色気なんてないわよ」
「本気でゆってるの?」
「当たり前よ」
「ふうん」
「何よ」
「俺、猿飛さんが髪かきあげると項にぐっとくるよ」
「ばかじゃないの」
「うん。ばかでいいから、ね、」
「何」

山崎の吐息があやめの顔にかかる。

「項、舐めてもよい?」
「いちいち了解とらないでよ」
「あやめ…は、強引が好きなんだよね。でも、俺は同意が好きなんだよ」
「ば……」

か。
塞がれた唇は、柔らかな喘ぎに消えた。

「顔見せて」
「そんな時だけ力業ずるいわ」
「猿飛さんかわいい」
「…今日は嘘がヘタなのね」
「何。何のこと」

いきなりあやめに正面を見据えられ、山崎は微かに動揺する。
そんな山崎にあやめはちらりと流し目をする。

「深くは聞かないわ」

悟られちゃったかな。

明日の任務。
実はちょっとだけびびっちゃってるってこと。

「一度はすんだけど…したりないなら好きにすれば?」

これで確証。
猿飛あやめは俺の揺らぎに気付いている。

かなわないな。
と、思いながら、あやめの長い髪を鋤いてやる。

「ちゃんと抱くからね?」
「眠くならないようにしてちょうだいね」
「じゃあさ、ちょっとだけ希望。いつもより、声、出してよ」
「出させてみせなさいよ」
「うん」

山崎があやめに覆い被さると、シーツから花の匂いがより匂い立った。
清々しいシーツにくるまって寝るのは最高だけど、今夜はもう少し先になりそうだ。
そう思いながら、山崎はあやめの湿った中に、ゆっくり入り込む自分の指先を温かいと感じた。





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