水彩画の空が落ちてきたなら。
□空を写し取った水彩画?
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……て言うことでもうみんな忘れてしまったかもしれないが、
現実をきちんと見つめて考えると、
俺は今、水っぽい(て言うか70%が水)の
青い薄い絵の具を頭からかぶっていることになる。
…………なんで?
さあね。おれが聞きたい。というかもう俺が聞いてる。
まず、今はまだ下書きの段階だったから、絵具も、筆洗も、筆も、パレットも、なぁ〜んにも準備していない。特に水と青い絵の具。
近くで色を塗っている人も、バケツの水を誰かにふっかけるようなそんな悪い子もいない。その前にだれもいない。
ないないづくしだ。
後ろから視線を感じてあわてて振り向き、
俺にも何が何だか分からないのに理由を説明しようとした。
けど、相手の方が早かった。
「はああ!!!!??おまえなにしてんの!?
え?水彩絵の具の海にでも飛び込んだわけ?
下半身もやばいですねぇ!
この年になっておも○しとか……ぶはぅ!!
おまっ…顔…っうほほほほほほほ!!!
女子来る前にどうにかした方がいいぜ?
……うふっ…どうしよ…やべっ
俺これ見て
笑い死にできる自信がある……!!!」
俺の後ろの席のやつだ。千昌、だったとおもう。
いつもこっちが怖くなるほどテンションが高い。
そしてうざい。俺には耐えきれない。
そいつは倒れそうなほど笑いながらしゃべるという芸当をやってのけた後、
じゃ、頑張れ、と言い、
しゃっくりをしながらよたよたと教室から出て行った。
―――くそおおおおおおおおおおおおお!!!!
だからこれには俺にもわからない理由があるんだってばぁ!!
と、どんなに心のうちで涙をのんで叫んでも、
もう一度爆笑して廊下で転がっている千昌には聞こえないわけで。
濡れたままいろいろ考えているわけにもいかなく、
どうにか上着わはずしてベランダに干し、
先生には筆洗をひっくり返してしまったと説明してジャージに着替え、
どうにか片づけをしてその美術の時間は終わった。
俺と一緒にびしょぬれになったはずの下書き半ばのあの風景画が、
綺麗に色づけされ仕上がっていたことがわかったのは、それからかなり後のことだった。――――