本棚 1
□悪魔との恋
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《はるか昔、この土地に悪魔と呼ばれた人がおりました。
ですがその悪魔は一人の少女に恋をし、普通の人間へと変化したのでした。
少女を愛した悪魔は幸せがこんなに心を満たすなんて初めて実感ました。
だが幸せは長くは続かず、少女は不慮の事故によりこの世を去ってしまったのでした。
少女の居なくなってしまった部屋は冷たく、あの幸せだった空間は悪魔の心を締め付けるのです。
なぜ愛しいあのコは居ないのだと。
悪魔はただ少女を想い泣き続けたのでした。
いつまでも…少女の名前を呼びながら。》
パタリっと本を閉じる。
「ねぇアクマさん?・・僕もアクマさんと同じ気持ちです。」
幼きころに貰った絵本は、何度も読んだせいか所々擦り切れている。
「アクマさん?今もまだ泣いていますか?」
部屋の窓は汚れのせいか外の月が霞んで見える。
「ふぁっ・・アクマさん。
ぼくも・・大好きな・・ひ・・と・・すぅ・・・・」
幼い子供は眠りながら涙を流す。
「ふん・・ガキが・・・・」
言葉とは裏腹に優しい手つきで涙を拭う。
「似てるな・・なぁアレン?」
幼い子供の髪を撫で部屋を後にする。
俺は悪魔・・
名前は遙か昔に捨てた。
あの愛した少女がくれた名前。
「もう一度くらいあの名前で呼ばれてもイイかもな・・。」