本棚 3
□君の隣
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《????Side》
私は地獄の様な場所 から逃げ出したかった
幼い時から一歩も外に出た事のない私は、今日隙を見て家を飛び出した
初めて見る世界はキラキラと輝いていて、私はキョロキョロと辺りを見回しながら素足で歩く
途中何度も嫌なあの視線を向けられた気がして、一目の無い所へと逃げこんだ
所々にある痣や傷。
そして最近は顔をナイフで切り付けられたっけ
今朝はお腹を掻き回されたからまだ痛みが治まらない
あの男が行う行為はよく分からないけど、あの瞬間だけは優しくしてくれるから私は黙って堪えるだけ、それにあれが終わればご飯だってくれた。
さっき迄は緊張していたのかお腹の痛みは治まっていたはずなのに、安心したせいかお腹が鈍く痛む
「っぅ、いたっ…はぁっ」
思わず地面へとしゃがみ込みお腹の痛みが去るのを堪える
「ふぐ…うぅ、お兄ちゃん、お父さん…」
あの男と暮らす事になってから会えなくなった家族を思い出し私は涙を流す
「エース兄ちゃん、父さん…。」
溢れ出す涙は止まらないし、加えてお腹の痛みも激しさを増していく
その時近づいてくる人の気配を感じ、私は口元を抑え声を押し殺す
「うっ…うぅ…」
けど誰かがこちらに気づいたらしく私に近づいてくる。
その人は私の前で立ち止まると、目線を合わすようにしゃがみ私を見つめる
月明かりに照らされ輝く髪色が綺麗で私は目を奪われる
そして双方の力強い瞳
そこで綺麗な人が口を開く
「なぁに泣いてんだ?ほら家迄送ってやる」
優しい声色に何だか少し安心すると、今まで感じた事のない痛みが私を襲う
「ひっ…うわぁん!うぅっ……!!!!!っぅ…痛…い!!」
馬鹿みたいに痛いと叫んでしまう私をこの人は面倒とか思わないかな?
うるさくてごめんなさい…
多分あと少ししたら治まるはずだから
嫌な汗が額から流れる
「おい?!!!大丈夫か!!」
大丈夫って言葉を言いたいのにまた痛みが私の邪魔をする
「……ったい、痛い」
その瞬間途切れそうな意識の中、綺麗な人に抱き上げられる
途中舌打ちが聞こえたがそこで私は意識を無くした。