本棚 3
□仮 No Title
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業火を纏う拳が腹に突き刺さり、身体の内側の機能は焼かれ、口から血を吐き出した。
目の前に居る弟を庇え、俺は満足感に浸り口元を緩めた。
最後の台詞は生まれて来た事、そしてこんなにも愛してくれたみんなに感謝を述べ、俺は弟の腕の中に倒れ込み絶命した。
馴染みのテンガロンハットはこの世に置いて行こう。
俺は身体から抜け出した魂の状態で、透けてゆく手そして身体を見つめ瞳を閉じた。
悪名高い父を恨みはしたが、良い人生だった…。
心の底から思った。
『さあ…どうせ俺は地獄行きだろう。
地獄の門番と一つ暴れてやろうじゃねえか』
エースは唇の端上げシニカルに笑い薄れ行く意識を手放した。
『ーーーさぁん』
誰かが俺に話し掛けてくる。
『あのぉー!すみませんがちょいとお兄さん起きて頂戴な!』
景色が変わり戦場とは程遠い、暗く静かな場所でエースは目を覚ますと、ヘラヘラと笑う女がエースの顔を覗き込んでいた。
『うおっ!なんだお前さんは?!地獄の門番か?』
『地獄って訳じゃぁ無いんですけどね、何て説明したら良いのかな…???生と死の狭間…いや違うなぁ…。死と死の狭間???ふむっむぅ…。』
唸りながら考え込む女をエースは怪訝そうに見つめるが、辺りを見渡すとこの空間に2人しか居ない事に気付き思わず女に話し掛けた。
『なあ…此処は本当に何処なんだ?それにこの空間には俺らしか居ないのか?』
すると女は考え込むのを放棄したらしく、エースの問いに答えた。
『実はですね、ただ今地獄と天国はとある戦争にて満杯でして、貴方はブッチャケあぶれちゃった訳ですよ。そして本来なら向こう2000年は貴方はこの空間に居て貰う予定だったんですが…』
『待て待て待て!2000年もこんな場所はごめんだ!』
『ですよねえ…。なので私の登場な訳なのですよ!私は死に神ヒルラと言います。単刀直入に言っちゃうけど貴方現世に戻ってみませんか?』
死に神ヒルラはヘラりと笑いエースに告げる。
『はあああ?!!』
『アハハっ困惑してる人間って面白い!フハハッ』
ヒルラは困惑するエースを指差しながら腹を抱え笑い出す。
『笑うな?!っうか単刀直入すぎて意味分からねえよ!』
『フハハッ!面白い人間だね本当。
奴らが私に話しを持ち掛けた理由も分かる気がするなぁ…。』
ヒルラは笑うのを止めると、シミジミと呟くとエースを見つめた。
『なあ…マジでちゃんと説明してくれよ、お前の話しについていけない…』
エースはガックリと肩を落とし力無く呟いた。
そんなエースを見つめるヒルラは、唇を綻ばせ笑った途端に真剣な表情へと変わる。
『ポードカス・D・エース…?
これから話す事を真剣に聞いてくれる?』
『おっおう…』
『我々の采配により均等化された世界がバランスを崩し傾きかけている』
『はぁぁあ?また意味分からねえ話しか?!!』
『フフっ君にはちょいと難しい話しだったかな?』
クスクスと笑うヒルラだが、声色と表情は真剣でエースは怒鳴りたい気持ちを抑え込み、ヒルラの話しを聞き続けた
『さあ続きだ。
我々は人間がする行いを最後まで見守り、人間が寿命が迎えれば見合った場所へと導く。
けれど今回ばかりは私達も君達人間が住み世界に手出しさせてもらった…。分かるかいポードカス・D・エース?』
『ますます訳が分からねぇよ…。』
『生と死を司り、ある時には鎌を振りかざしその者の命を奪う事もする。
そして今回君が死んだ理由も私達が一枚噛んで居るんだよ、分かる?』
エースはヒルラが言う事を頭の中で整理し始める。
暫くの沈黙の後、エースはヒルラを睨みつけながら口を開いた。