【 お そ 松 さ ん 】
□第二十マツ
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カ「くれないって……どういう事だ、一松?」
一「そのまんまなんだけど。俺にサカキちょうだい」
カ「…………」
カラ松は、一松が示す言葉の意味は兄弟を取られたくないという嫉妬からだと思っていた。
もともと友人関係も少ない彼だから、サカキを取られるのが寂しいという弟ならではの願いだと、勘違いしていたのだ。
『ぁッ……ちょっと…!』
だが、一松がサカキの首にそっとキスするのを見て、それは違うと感じた時には既に体が動いていた。
カ「ダメだ!!」
一「…………」
カ「サカキは俺のだぞ、一松。人のものに手を出したらダメじゃないか!」
『カ、カラ松君……』
一松からサカキを引き離すと、自分の方へ引き寄せてしっかり抱きしめながら、カラ松はそう訴えた。
一「は? そんなの知らない」
カ「えっ……」
一「いつからクソ松のものになったの。どうせ惚れ薬の所為で頭おかしくなったんでしょ。だったらそれ勘違いだよ」
カ「勘違いじゃないぞ! 俺はちゃんとサカキが好きだ!」
一「……クソ松のクセに」
お「──ああー、負けたー……今日はついてないぜぇ」
果たしてピリピリした空気をかき消してくれるのか、部屋の中に新たな参者がやって来る。
『おそ松ッ……』
お「ん、何? 喧嘩?」
『(ウォイィィッ!! よりによって
一番厄介な奴が帰ってきやがったぞ!!!)』
一「チッ……」
カ「あ、一松! 待て、まだ話はッ……」
舌打ちをした一松はおそ松と入れ替わるように部屋を出て行った。
カ「サカキ、話はまた後でするからッ…」
『う、うん……』
カ「オイッ! 一松!」
そして後を追ってカラ松も部屋を出て行き、サカキはホッと胸を撫で下ろした。
第二十マツ
お「おーおー、モテモテだなサカキ」
『ッ!!?』
一難去ってはまた一難。
疲労困憊の様子を見せるサカキはいつものように誤魔化す余力もなく、おそ松の一言に素直な反応を示す。
『えッ、いや……何の、事…』
お「もしかして気づいてないとでも思ってる? いやモロバレだよぉ? あんな事言ってるけど、トッティも気づいてるだろうし。何も知らないバカはチョロ松と十四松くらいだって」
『ッ…………』
お「でもあんな一松見るとちょっと面白いよな。必死になっちゃってぇ」
『………………』
お「弟たちが必死に奪い合う姿見てるとさぁ、興味湧くんだよねえ。それに長男抜きで面白い事やってると気が引けるって言うかさあ……」
既に嫌な予感は頭に浮かんでいた。
その為サカキはすぐにでも逃亡したかったのだが、入口の前にいるおそ松の所為でそれは叶わなかった。
お「お兄ちゃんもその戦争加わっちゃおうかな」
『なッ……』
実に楽しそうな笑顔でとんでもない事を吐いたおそ松に、ものの数分の時間と体力が残っていれば、サカキも抵抗できたかもしれない。
だが今の彼にその力は残っていなかった。
お「いやぁ、本当に不思議だよね!」
『うッ……』
肩を思いきり掴まれ体を強ばらせるサカキ。
お「家政婦やってくるぞーってウキウキしててさ、男でガッカリしてた風景が嘘みたいじゃん。いつの間にかカラ松と一松を虜にしちゃってねぇ」
『と、虜って……』
お「さすがは家政婦ー! アッチの奉仕もしちゃいますぅみたいな? 一体どんなテク使ったの、インラン家政婦さーん」
『…はあっ!? んな訳ねぇだろ! バカじゃねぇの!!』
お「えぇー? じゃあどうやって男二人を手玉に取ったわけ? なあ、俺にもそのテクとやらを見せてくれよーサカキ」
『ッ……そ、そんなものないから!!』
おそ松の手を振り払い、即座に部屋を出ようとしたサカキだったが、彼の足をおそ松が掴んでそれを阻止する。
『痛だ…ッ!?』
踏み出した足を引かれた為にサカキは見事に転けてしまい、うつ伏せになった彼の上におそ松は乗っかった。
『なッ!? ちょ、退けろよ!!』
お「うるせぇな、あんまり生意気言ってるとなー……こうしてやる」
『ひッ……』
自身のベルトにおそ松の手がかけられた途端にサカキは身震いした。
『…ちょッ、何やってんだよバカ!!』
お「日頃の感謝を込めてぇ、この俺が家政婦サマにご奉仕してあげるよ…」
『ッ……やっ…ほんとに、バカじゃねぇの!? 笑えねぇよ!!』
お「そんな遠慮すんなって。気持ちよくしてあげるんだから」
『…あ、やだッ……ん…』
お「ん、なに?」
『ッ……クソ…マジでやめろよっ!!』
お「えぇー? そんな素直に聞くわけないじゃん。つーか弟の相手してる割にはイイ反応だな」
『やっ……あ、あいつらとは、そんな事してないッ……!』
お「え、そうなの? ぶっちゃけカラ松とはもうヤっちゃってんだろ?」
『し、してないって……!!』
お「てっきりもうヤってると思ったんだけど……あ、コラ暴れるなよ」
『んっ、は……おそ松!! 離せ!!』
お「やだねぇ。つか嫌がってるようには見えねぇよ? …こんな硬くしてヤらしい液でグショグショにしてるクセにさ」
『ッ……』
目元には涙を浮かべ、唇を噛み締めるサカキ。
抵抗できずに図星を突かれて何も言い返せなかった。
お「可愛いねぇ、お子様サカキちゃん」
『んあっ……ゃ、ん…やめっ…おそまつぅ…はあっ、あっだめ…もうっ……』
お「……はい、ここまで!」
『ふぇ……ッ?』
快楽に支配されていたサカキには見えなかっただろうが、満足そうに嘲笑したおそ松は、ふいに手を離した。
突如無くなった快楽にサカキは声を漏らす。
お「今日はイかせないよ」
『ハッ……え…』
お「だって面白くないじゃん? もし俺にイかせてほしいなら……」
絶頂に耐えるように震えるサカキの耳元へ顔を寄せると、おそ松は低い声で告げた。
「──さっさと別れろ」
『えっ………』
「その方が面白いし? ハハッ」
そう言って高らかに笑い声を上げて出て行ったおそ松に、サカキは拍子抜けしていた。
『い、意味分かんねッ……んっ…と、とりあえず、トイレ……』
絶頂寸前で止められてしまい、かなりキツい状態のサカキはとにかく今は自身の熱を下げようと早足でトイレへ向かった。
『あのクソ長男ッ……』
前屈みでトイレを目指していたサカキは、視界が少しばかり悪かったようだ。
『うわっ……!?』
部屋の角を曲がった途端に誰かにぶつかってしまい、そのまま相手の方へ倒れ込む。
『痛ってー……』
チ「だ、大丈夫、サカキ?」
『チョロ松君ッ……』
サカキの下敷きになっているのはチョロ松だった。
チ「どうしたの? そんなに急い、で……」
『ッ……』
どこか切羽詰まった様子のサカキを心配して起き上がったチョロ松は、そこで違和感に気付く。
チ「えっ……」
自身の脚に触れる何か硬いモノに目を向け、そして頬を紅潮させたサカキを見た途端にチョロ松も一気に顔を熱くさせた。
『……ごごごこめんッ!!!』
チ「え!? いいいや、全然そんなッ、せ、生理現象だから!! お、俺だってよくあるし…きき気にしないでっ!!」
『ッ……』
慣れないそのチョロ松のフォローが、逆に恥ずかしいと感じるサカキだった。