【 お そ 松 さ ん 】
□第一マツ
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東京都内。極一般のとある家庭が存在していた。一つの特徴を除いて──。
お「暇だなあ。何する? カラ松」
カ「フッ…チョロ松はどうだ?」
チ「そうだなあ…。どうする、一松?」
一「……十四松は?」
十「トド松は!!」
ト「うーん…、おそ松兄さんは?」
お「ああーー…、する事ねえ…」
松野家には六人の兄弟がいる。
長男、おそ松。
次男、カラ松。
三男、チョロ松。
四男、一松。
五男、十四松。
末弟、トド松。
そんな彼等には最大的な特徴を持っていた。
一つは、全員が齢二十を超えた成人男性なのだが、職を持ち合わせていない──いわゆる、ニートである事。
そしてもう一つは、彼ら六人の顔が全く同じである事。
──そう、彼らは六つ子なのである。
第一マツ
チ「いい加減働かないと俺達マジでやばいよ」
お「ええ? 別にいいんじゃん。ひたすら遊んで暮らしてえ!」
チ「それもう人間として終わっちゃうから!! しっかりしてよ、おそ松兄さん…」
カ「フッ…俺は自由に愛される孤高の鳥さ」
チ「お前はなんで生まれてきたカラ松!!」
十「野球しようっ! 野球!!」
チ「いやもう俺達小学生じゃないからね、十四松?」
ト「あ、返信きた♪」
チ「スマホばっかり弄ってないでお前も少しは考えろ、トド松!!」
一「…………」
チ「せめて何か言って一松!!」
就職活動の一文字も脳内に刻まれてすらいない五人を必死に宥めるチョロ松。
実際彼も働いてはいないのだが。
──昼間から自宅でのんびり過ごしていた彼らの元に、一筋の光が舞い降りた。
「ニートたち、実は言い忘れていた事があるんだけどね」
開口一番に息子に対してとんでも発言をしたのは彼らの母親である。
六つ子は言い慣れているのか気にする事もなく耳を傾けた。
「今日から我が家に家政婦が来ることになってるから」
「「「「「「家政婦ッ!!?」」」」」」
さすがは六つ子。見事に同じ反応を見せる。
お「か、家政婦って…」
カ「もちろんレディだよな」
チ「で、でも普通若い子じゃないし…」
一「可能性はあるんじゃない」
十「家政婦! 家政婦ってなに?」
ト「可愛い子だといいなあ」
下心丸出しの六つ子に敢えて何も言わず、母は部屋の外へ手招きをする。
「さあ、御挨拶なさって」
「「「「「「ッッッ!!!!!」」」」」」
これまた六つ子は綺麗に揃えて息を呑んだ。
一体どのような子が現れるのかと胸をドキドキ、目をキラキラさせて期待に胸を焦がしていた。
しかし、彼らの期待を裏切るように部屋に入ってきたのは──
『はじめまして、家政婦になります。サカキです。よろしくどうぞ』
甲高い声を出すでもなく、煌めく長髪を靡かせるわけでもなく、華奢な身体をしているわけでもない。
ご丁寧にお辞儀をして挨拶をしたのは───紛れもない男であった。
「「「「「「男かよっ!!!!」」」」」」