【 お そ 松 さ ん 】

□第二マツ
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お「何だよ〜。可愛い子が来てムサ苦しい生活とおさらば出来ると思ったのに男じゃん! しかも男前…」

チ「そんなに下心満々だったら女の子なんて寄り付かないでしょ」

ト「チョロ松兄さんだって鼻の下伸ばしてウキウキしてたのによく言うよ」

チ「なッ、伸ばしてねえよ!」

十「イケメン! イケメン!!」

カ「フッ…まあ俺のビューティフルフェイスには敵わないけどな」

一「……」

チ「だからせめて何か言って一松!! 物語始まってからお前一度も喋ってないからね!?」

お「ちくしょーッ…何でそこ男かなあ」

チ「まあ、ちょっと残念だったけど悪い人じゃなさそうだし…良いんじゃない?」

お「いや、良くねえよ!! 家政婦って言ったら普通女だろ? ガッカリ過ぎてもう無理…動けない、一生働けない」

チ「変な口実にしてだらけるな!!」

ト「でもやっぱり女の子が良かったねえ」

カ「フッ…俺の美しさにカラ松ガールも近付けやしないんだろう」

チ「どんだけ女にこだわるんだよお前ら…」

お「バッカだなあ、チョロ松。家政婦って事はずっと家にいる訳だぜ? つまり近付くのも簡単、お喋りし放題、そんでもってタッチできる!! お触り自由!!」

チ「結局下心丸出しじゃねぇか!!」

一「俺も触りたい。おっぱい」

チ「第一声それで良いのか一松!!? 確実に印象最悪だぞ!!」

お「だよなあ! 一松はよく分かってるじゃないか!! ああーー…つまんねえな、男で」

『そりゃ悪かったな、オ・ト・コ・で』


 最早会話というより口々に文句を呟いていた六つ子の元に、一層低い声が響く。


十「サカキさん、エプロンしてる!」


 部屋の前に立っていたのは、無表情のまま仁王立ちしてこちらを見つめるサカキだった。


お「え、何のこと?」

チ「誤魔化し方ヘタクソだなオイッ!! ええと、サカキさん。違いますからね? 別に貴方が嫌いって言う訳ではなくて、ただコイツ等がクソなだけなんで…」

ト「ちょっと何一人常識人装ってんの? チョロ松兄さんだって女の子が良かったんでしょ?」

チ「バッ…!! そんな事ねえよ!」

お「でもさあ、チョロ松はチェリー松だから女の子に耐性ないもんねえ。何やらかすか分かんないから一番ヤバイ」

チ「チェリー松って誰だッ!!」

『どうでもいい、黙れ。晩飯できたから降りて来い』

「「「「「「…………」」」」」」


 収支が付かない状況を一言で収めたサカキに、皆は唖然としていた。


ト「だからオタマにエプロンだったんだね…」





 第二マツ




お「何でアイツあんなに俺様なの? え、何様なの?」

ト「最初は好青年みたいな挨拶だったのにね」

チ「いや誰だって家政婦としてやって来た家に六つ子がいてしかも全員ニートなんて知ったらあんな態度にもなるでしょ」


 ご飯ができましたよと言うや否や、さっさと一階に降りたサカキに悪態を吐く長男、おそ松。先程から文句しか吐いていない気がする。

 チョロ松に最もな事を突かれ、誰一人口出しをしなくなってしまった。


チ「本当にまともな奴いないのかよ、この家…」

十「すっげえええ!!」


 そんな中、十四松が感嘆の声を上げる。

 他の五人も目を向けると、そこには思わず声を漏らしてしまう光景が広がっていた。


お「めちゃくちゃ美味そう…」

チ「これってサカキさんが作ったんだよね…?」

ト「クオリティ高っ!! 絶対美味しいでしょコレ…」

カ「パーフェクト和食…」


 
 六つ子が向ける視線の先には、メディアで取り上げられてもおかしくはない、まさにこれぞ日本の食と評してもいいような夕食が用意されていた。


お「でもまあ、どうせ見た目だけで味はそうでもないみたいなオチだろ」

十「えっ! 美味そうだよ!!」

一「…食べてみれば分かるでしょ」

「「「「「「いただきますっ!!」」」」」」


 それぞれの位置に座り、合掌をして一口食した六つ子。全員、沈黙。

 一体誰から口を開くのかと思われたのもほんの束の間、六つ子はほぼ同時に歓声を上げた。


お「美味えええええッッッ!!! 何だよコレ! こんな美味い飯食ったことねえよッ!?」

カ「美味い…箸が止まらない…ッ!!」

チ「美味しいってレベルじゃないよ!! 普通に店出せちゃうよ!!」

十「美味いよおっ!!」

お「男前で料理も出来るのか…気に食わねえけど美味いっ!!」

ト「家政婦なんだから料理出来るに決まってるんじゃん。でも本当に美味しいねえ」


 文句と歓喜を浴びせながら、六つ子は夕食をあっという間に食べ終わり、それと同時にちゃぶ台の上へ皿が置かれた。


『ほらよ』


 六つ子それぞれの前に置かれた皿の上には、高級レストランで見られるようなトッピングを施したデザートが乗っている。


チ「デザートもあるのかよ!? しかもオシャレだよっ!!」

十「すごいねっ! サカキさんすごいね!! コックさんだね!!」

『ニートってティラミス食べたことあるの?』

お「それくらいあるわっ!!」

カ「フッ…ティラミスか。俺に似合うほろ苦いビターな味だ」

一「美味い…」

ト「美味しーいっ!」



 何やかんやで六つ子のハートを掴んだサカキの夕食に、彼らは少しばかり打ち解けたのであった。



 
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