【 お そ 松 さ ん 】
□第五マツ
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お「いや〜、疲れたあ〜。やっぱり必死になって働くもんじゃないよねえ」
一「そもそもニートなんかが働いたら駄目だったんじゃない…」
チ「人として最悪だよそれ!! 大体そんな働いてないからね!!? 10分置きに交代してたし詐欺行為だよ!?」
カ「フッ…雁字搦めってヤツだな」
お「でもま、これでもう当分は働かなくていいよな!」
チ「何でたよっ!? バカなの!!?」
『あ? 帰ってきたの?』
六つ子にしては珍しく一汗かいて帰宅をした矢先、夕食の準備をしていたサカキにバサリとそう言い放たれた。
第五マツ
お「おお〜っ!! 鍋じゃん!! 丁度腹減ってたんだよねー」
ト「さっすがサカキさん! よく分かってる!」
『え……』
カ「フッ…俺達の汗水流した苦労に癒しを与える。お前は幸運の女神、いや…ヴィーナスだ」
『いや、俺男だよ』
十「お・な・べっ!」
『ちょ、ちょちょちょ待て待て待て』
お「ああ? 何だよ腹減ってんだから早く食わせろよ」
『いやいや、お前ら数日前にブラック工場で働く言うて出てって何か知らねえけどその後はウキウキしてラーメン屋で働く言うから俺はもう飯は賄いで終わらすと思ってたしよ。一人で食べようと思って用意した鍋だよコレ』
一「あ? もう働く気ないけど…」
チ「いや再就職しようよそこは!!」
十「鍋食べるーーっ!!」
『だから俺用に作ったんだよっ!!』
ト「ええーっ、良いじゃんケチー」
『脳ミソ腐ってんのか!! 数日前の意欲どこ行った!? 働けクソニート共!!』
お「その内するってー。……多分。じゃ、いただきまーす」
『ゴラアアアアアッッ!!! 話聞けやっ!!』
皆はさっさと座って合掌するととんでも勢いで食べ始めてしまう。
自分の為に作った鍋を無職の六つ子に食されるのをサカキは黙って見つめていた。
十「美味いよお!!」
カ「んー…、デリシャス」
一「…………」
ト「やっぱり美味しいね! サカキさんの作ったゴハンって」
チ「ごめんね、サカキ。でも俺も食べていいかな?」
『…………好きにしろよ』
チ「ってちょっと美味しいって言われて何素直に喜んでんの!? 意外と現金だねサカキ!!」
お「んー? そういえばチョロ松さ、いつから呼び捨てになったの?」
チ「えっ…何が?」
お「いや、今もサカキって呼んでたじゃん。なんか意外だよねー、そういう所はちゃっかり手なずけてる感じ」
チ「手なずけるってなんだよっ!! 別にそんなつもりないから!!」
ト「チョロ松兄さん女の子絡むとポンコツなのに意外と世渡り上手的な?」
お「いやいや、ないない」
ト「そうだよねー。やっぱりそっか!」
『おバカだねー、ニート共。どう見てもチョロ松君が一番の安牌でしょ』
チ「サカキ……」
お「うわー、そこフォローしちゃうんだ。へえー、そこまで仲良くなっちゃってるんだー…ふーーーん……」
チ「何だよその顔、何か文句あるの!? 別に家政婦と仲良くなるのなんて普通でしょ!」
お「えええー……? 何か必死に否定しちゃってるじゃん、ねえ?」
ト「うん、これはねえ?」
一「間違いないね…」
カ「ああ、そうだな」
十「えっ、なになに!!」
おそ松は箸を置くと、皆の気持ちを代弁するように至って真顔のままチョロ松に告げた。
お「お前ら、出来てんだろ」
チ「何ッッッでそうなるんだアホかああああああああッッ!!!!」
ト「え、違うの?」
チ「違うに決まってんだろバカなの!!?? 出来てる分けないでしょ!! 俺たち二人とも男だよッッ!!!」
お「女の子に耐性付かないから男に走ったんじゃないの?」
ト「童貞が考えそうな事だよねえ」
チ「ふざけんなっ!! お前らも童貞だろうが!!! ちょっとサカキ、黙ってないで何か言ってよっ!!」
『えっ……違ったの? 俺はてっきりそうなのかと……』
チ「ゴラアアアッ! お前までそっち側行ったら俺もうフォローのしようがねえよ!! 本当に誤解されちゃうからやめてよっ!!」
『何だよ、ちょっとふざけただけだってー』
チ「やめろっ! 本気で寿命縮まるわ!!」
お「そうだよ、冗談を本気で受け取り過ぎなんだって。頭固いなーチョロ松」
チ「冗談のレベルが致死率高すぎなんだよお前らっ!!!」
十「チョロ松兄さんお鍋冷えちゃうよ!」
チ「お前らの所為で食えてないんだよ!!」
終始叫んでばかりのチョロ松。
そんな光景にも既に見慣れてしまい、サカキでさえボケるという結果になってしまった。
お「でもさ、本当の所どうなの?」
チ「だから何もねえよっ!」
『ないない。確かにチョロ松君の事一番好きだけど、恋愛感情はない』
ト「堂々と告白しちゃったよ…」
『あ、でも一松君も好きだよ』
一「えっ……」
お「えぇえっ!? どういう繋がり!!? 訳分かんねえ……」
カ「フッ…もちろん、俺も好きだよな?」
『あーーーーー……うん』
十「僕は!! 僕は!!」
『はいはい、好きですよ』
ト「ええ、じゃあついでに聞いとこうかな。もちろん僕は嫌いじゃないよね?」
『うん、嫌いではないね』
ト「何その意味深な感じ…」
お「ま、俺は当然……」
『嫌い』
お「えっ」
『嫌いです』
お「何でだよっ!? 少なくともカラ松より俺の方が上だろ!!」
『ちょっと生理的に受け付けないみたいな? まあ嫌いなんだよ、ごめんね!』
チ「そりゃ当然だよね。テンションだけのガサツ人間だから。好きになる人なんかいないって」
お「ふざけんなよっ! 納得行かねえ!!」
『えっ、意外と繊細なのね。何かごめん』
お「全然悪いとか思ってねえだろ!! 大体前から思ってたけどお前何様なんだよ!? はっ? 家政婦? そこ普通女でしょ!! 何で男が来てんの? テンションガタ落ちだわ!! 超性格悪いしお前なんかいない方がいいんだよバーカッ!!」
『………………』
チ「いや、おそ松兄さん…さすがに言い過ぎっ…」
『あー、悪かったよ。確かに言い過ぎました。ごめんなさい。でも安心していいよ。俺はまだ家政婦見習いだから、今は研修期間みたいなもんだしすぐに出て行くよ』
十「えっ! そうなの!」
『だから無理に距離縮めなくて良いよな。これからは立場を考えます。すみませんでした。じゃ、皿とかは流しに置いといてくださいね』
チ「あ、ちょ、サカキ……」
あっさり引き下がって部屋をあとにしたサカキに六つ子は拍子抜けしていた。
ト「ちょっと言い過ぎたんじゃない? おそ松兄さん」
お「はっ!? 何で? 何で俺が悪いの!? どう見たってアイツだろ!!」
チ「口答えするのは分かるけどバーカは無いよね。子供じゃないんだから」
一「それに文句いう割には飯食ってるし…」
お「お前らはアイツで満足してるのかよ!? あんなに女の子が良いって言ってただろっ!!」
十「僕は全然気にしてないよー!!」
一「俺も別に…」
カ「特に問題は無いな」
ト「まあ最初は残念って思ったけど、料理上手だし、ちょっと口が悪いだけで悪い人じゃないよね」
チ「おそ松兄さんだけだよ、否定的なの」
お「はあっ!? 意味わかんねえッ、お前らバカじゃねえの! もういいよ、食欲無くした!!」
怒号を上げて出て行ったおそ松を誰も止めなかった。
止めても無駄だと分かっていたからだ。
チ「本っ当に小学生並の脳ミソなんだから」