おお振り
□第3回
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俺たちの初めてのチームとしての偉大な一歩
第3回
三「(もうすぐ畠君達に向かって投げるのか……シートバッティングでだって抑えられたことないのに、今日は真剣勝負…オレが打たれたらチームが負けちゃうんだ)」
阿「三橋」
三「はっはい」
阿「オレ すぐ打順だからあとキャッチボール泉とやってくれ」
三「……」
阿「立ったままでよろしく」
泉「あい」
阿部は、ベンチに入って防具をはずす
花「この試合に勝ってはじめて三橋が仲間になる───か……三橋って確かに、中学時代から脱出してないカンジだよなァ」
花井がそう言ってる間にマネジの篠岡は、練習校の人にアナウンスをお願いされている
花「三橋ってたぶんチーム内でスゲエ嫌われてたんだろうな、接し方が元チームメイトどうしとは思えねェよ……向こうはシカトだしこっちは避けまくってるし」
阿「ま、あいつのしたこと考えりゃ当然かもね…相手には恨まれてるだろうし、三橋も恨まれて当たり前だと思ってる」
阿部と花井の話を耳にはさんだチームメイトが話に耳を傾ける
阿「三橋は元チームメイトへの罪の意識でイッパイで、学校替わった今でもあいつらにひれふしたままなんだよ」
巣「“罪”って、三橋が投手降りなかったせいで3年間負け続けたってアレか?」
阿「そ」
水「このチームにひれふしてても、公式戦ではまず当たんないからいいけどねー」
阿「よくねェよ、三橋のあのクサッた負け犬根性……すぐメソメソして人をイラつかせるあの態度……!あんなんがマウンドにいちゃ勝てる試合も落とすっつの!なあ!?」
阿部がイライラしてきたので相づちを打つように「うんうん」と答える
阿「あのやっかいな性格の基をつくってんのは、中学時代の暗い思い出なんだよ。中学時代、たしかに三橋はチームのためにならないことをしたんだろう──けど、西浦[ウチ]に来た以上いつまでも中学のヤツラにしばられてちゃこまるんだ!この試合に勝てば、三橋は一歩踏み出せると思う。あいつのためにこの試合、どうしても勝ってほしいんだ!」
みんなが阿部の話に夢中になる
阿「───頼む。特に……」
阿部の視線がオレの方に向けられる
『え、……なに?』
阿「夏川、今日の試合は本当に大事なんだ。だから、三橋が崩れそうになっても出て来ないでほしい」
『……いいよ。オレ出る気なんて無かったし…それに、阿部は三橋と組んでたほうがいいし、この試合に俺が出たって何も三橋のためにならない。それくらい、俺だってわかってるよ』
花「お前らのゆーことはわかったよ。今日は“ただの練習試合”じゃなく“うちの投手の将来が決まる試合”だと思えってことだな?」
阿部がうなずく。
栄「――さっきの監督のかけ声には、勢いで“エース欲しい”って答えちゃったけど……よくわかったよ、気合い入れるよ!」
巣「うん」
田「……うん、わかった!」
チーム全体、特に阿部が投手のために動いてるのを俺はぼーっと見ていた
三星の審判らしき人に、1番バッターの栄口が呼ばれる
栄口は、叶のだす球をうまくバントしてサード前に転がすが、うまく叶が処理する
思った以上にマウンド慣れしていて西浦メンバーが驚く
沖、阿部と続くがスリーアウトで攻守交代になる
オレの横では、三橋が捕手につける防具を手にとり阿部に渡しに行く
そして、三星から見えないように阿部の後ろに隠れるように足の防具をつける
阿「………オイ、オレの後ろにかくれてもムダだぞ。マウンドにはかくれる場所ないんだからな」
三「はいっ」
阿「よし、」
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