Short

□ずっと一緒
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次の日、池谷は学校に来なかった。

そういえば、幹に渡してなかったな、池谷の手紙。
休んじゃったんなら仕方ないか。



渡さなくてもいいよね、別に。



「槙彦、お前池谷に呼び出されたんだってなぁ」

「……だからなんだよ」

「また幹彦先輩宛てなんだろ?」

「わかってんなら言うんじゃねぇよ!」



悪友と呼ぶに相応しいクラスメイトが、冷やかしがてらに俺に言ってくる。
面倒なのは今に始まったことじゃない。



「まぁ幹彦先輩って完璧だもんなぁ。モテて当然かぁ」

「……お前そっちの趣味あんのかよ」

「そーゆーんじゃなくて!同性の俺から見てもカッコいいってことだよ」



そんなの弟の俺が一番よく知っている。
イヤというほど、よくわかってる。



「おら、次葛城の化学だぞ。早く行かねぇと凪に怒られるんじゃねぇの?」

「あ、やべ!」



化学馬鹿の凪をだしにして悪友を引き離す。
長年の業の賜物だ。

幹はどうしてあんなにモテるんだろう?
幹はどうしてあんなに皆に優しいんだろう?
幹はどうして皆のモノなんだろう?



「槙?行かねぇの?」

「あぁ……。いいや、帰る」

「は!?ちょっ、槙!?」



幹なんかキライだ。
俺だけのモノにならない幹なんてキライ。

俺は幹のモノなのに。
幹のことばっかり考えてるのに。
幹だけのモノなのに。


どうして幹は俺だけのモノじゃないの?
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