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□ラブレターが配達
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「お前、ばっかじゃねぇの?」
初対面で、アイツはそう言ったんだ。
ソイツはすっごい美形で、だからやっぱりモテモテだし、噂も絶えない奴で。
学年が違ったって噂が広まるぐらい、本当に有名人なソイツ。
そんな美形の罵声に、頭に血が上るよりも前に驚いた。
まぁそんなの一瞬で、すぐにかっときたけど。
「な、なな……!バカってなんだよっ!!」
「バカだろ。顔からして」
「か、顔!?顔とか失礼すぎるだろ!」
「うるせぇな、バカだと思ったからバカって言ってんだよ」
「意味わかんねぇし!なんで俺がバカなんだよッ!」
「こんなとこにひょこひょこ現れるからだろ」
あぁ言えばこう言うって、こんな奴のことを言うのかも……。
ソイツはすっごく不機嫌そうな顔を俺に向けて、チッと舌打ちした。
いいご身分だな、おい。
俺はクラスの女子に頼まれた封筒の類を、この男、天津 蓮に渡しに屋上までやって来ている。
こうなるまでにクラスでいざこざがあったのだが、とりあえずそこはすっ飛ばして……。
俺だって何の接点もない天津に会いに屋上に来た。
こんだけカッコいいんだから、接しにくいと皆が感じている。
だから天津が屋上にいることは誰もが知っているのに、誰も屋上には無闇に近付くことができずにいた。
俺としては天津の存在は知っていたけど、別にどうでもよかった。
話したいとか思ったこともなかったし。
それでもオーラみたいな、なんかよくわかんないモノを天津から感じたから、渡してすぐに帰ろうと思ってたんだけど……。
「頼まれたからって、こんな紙切れ渡しにのこのこ来たお前はバカだ」
「おま………!?」
「こんだけ丁寧に言ってやったら、バカでも理解できただろ」
「はぁ!?」
なんか、すっげぇ言われっぱなしじゃねぇ?
言いたい放題言われて、なんで言い返せないんだよ、俺!
しっかりしろ!
「ば、バカバカ言うな!」
なに小学生みたいな言い返ししてんだよー!
も、もっと他にないのかよ!
「とにかく!これ全部アンタあてだからな。俺は渡したからな!」
「迷惑だ」
「知らねぇよ!迷惑なら自分で直接言えよな」
言ってやった!
ちょっと強く言ってやったぞ!
でも天津はそんな俺には全く怯まなかった。
「だからテメェはバカなんだよ。頼まれたらなんでもやるのか」
「は?どーゆー……」
「俺にこの手紙を読んで欲しけりゃ、自分で渡しに来いって言え」
「え、あ、おい!」
天津が屋上の出口に向かって歩き出した。
でも俺はまだ自分の手に封筒を持っていたし、言われっぱなしも癪だ。
慌てて呼び止めた俺を、天津は嘲笑うかのように顔を歪めて俺を振り返った。
「言われりゃなんでもやるんだもんな」
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