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□ラブレターが配達
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次の日。
クラスの女子たちから聞かれるのは必須で……。

でも言いにくいんだよなぁ……。



「渚ー、ちゃんと渡してくれたあ?」



い、いや………。
渡そうとしたんだけどさ……。



「つうか天津先輩と喋ったんでしょ?羨ましいー!」



何が!?
アイツめちゃくちゃ性格悪いからな!
人のことバカにしやがって……。



「やっぱカッコ良かったでしょ」



あんなん顔だけだぞ。
マジで最悪。



「あ、天津先輩だ!今から帰るのかなぁ」

「どこ!?」

「え?今そこの廊下歩いてったけど」



クラスの女子たちに少しの申し訳なさを感じながら、俺は天津の影を追った。

やられたまんまで引き下がれるかよ!
このままじゃ終われない。
終わらせない。



天津には意外とすぐに追い付いた。

長身で後ろ姿でも分かるイケメンオーラに、少し怯む自分がムカつく。



「おい!」

「………」

「おいってば!」

「………」

「天津 蓮!!」

「……るせぇな」



立ち止まったかと思えば、綺麗な顔を不機嫌に歪まして。

顔を見るだけで、ムカつくし、けど怖くて、
何か言いたいのに、言葉に詰まる。



「何のようだ、バカ」

「俺はバカじゃねぇ!篠田 渚だ!」

「バカで十分だ。どうせバカだからな」



涼しい顔で人をバカバカと……!
マジムカつく!



「なんだよお前!いっつも人をバカにして、見下しやがって……!そんなに自分が偉いのかよッ!」



さすがの天津も一瞬黙った。
いつまでもバカバカ言われて黙ってる俺じゃないんだからな!

でも……。
ちょっときつく言い過ぎたかな……。



「……今度は説教か」

「え?」

「お前こそ、自分がどれだけ偉いと勘違いしてんだ」

「別に偉いなんて……」



天津は俺との間を縮めるように、こちらに歩いて来る。

少し怖くて、でも負けたくない。
後ろに下がりそうになる足を、俺は踏ん張ってその場にとどまった。



「人に頼まれたから話したこともない俺にラブレター配達して、ムカついたから俺の後付き纏って」

「付き纏ってなんか……」

「じゃあ、なんで追い掛けて来たんだよ。昨日の紙切れも持たずに」

「そ、それは……」



まるで追い詰めるような言い方。

怖い。
ムカつく。
ふざけんな。



「アンタが、俺のことバカにするから……」

「バカだろ」

「違う!」

「じゃあ、なんだよ」

「お、俺は……」



なんでこんな追い詰められなきゃなんないんだ……。

なんで俺……、
天津を追い掛けたんだ……?



「どうせ頼まれて断り切れなかったんだろ。お前そういうタイプだよな」



わかったように言うな。
まだ二回しか喋ったことないくせに。



「お前って偽善者だな」

「ぎぜん、しゃ……?」

「俺があんな紙切れ受け取るとでも思ってたのか?思わないよな、俺は今までそんなん受け取ったことねぇんだから」



だからなんだよ。
知ってるよ、そんなこと。

俺も、その手紙を俺に託した女子たちも。



「それでも俺に渡しに来たお前は優しいんじゃない。ただの偽善者だ」



なんでだ。
なんでこんな、胸がえぐられたみたいに痛むんだよ。

たかが、天津に悪口言われたくらいでなんだよ。



「……偽善者でも、なんでも、アイツらはアンタに本気なんだよ」



なんで俺、こんな泣きそうなんだろ……。



「いっつも受け取って貰えないって悩んでるアイツら見てて、少しは協力してやりたいって思っちゃ悪いのかよ……」



泣くなよ、俺。
カッコ悪すぎじゃん、そんなん。



「人の気持ちも分かってやろうとしないお前が、なんぼのもんだよ!」







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