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□ひいきした生徒の告白
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「先生のことが好きです」

「は?」



火曜日の昼下がり。
昼休み。
天気は快晴。
秋にしては暑さを感じる気温に湿度。

そう。
これといって大した情報もないような、なんでもない日常の一幕に起きた。



場所は化学室。

3メートルほど距離を開けた先に立っているのは、俺が受け持つクラスの男子生徒だ。
もう一度言う。

男子生徒だ。



「あぁ……。そう……」

「………」

「………」

「……好きです」

「なんで二回言った!?」



二年の柔道部だ、確か。
170はある俺の身長を軽々しく越えるだけでなく、柔道部なせいか筋肉もがっちりである。
顔も整っているし、もてるだろうことは簡単に想像ができた。

実際に好きだ好きだと言っている女生徒の話を聞いたこともある。



「罰ゲームかなんかか?」

「………」

「あんまり教師をからかうもんじゃないぞ。いくら温厚な俺でもだな……」

「からかってなんかいません」



奴は真剣な顔をしてる。
と言っても、ほとんどは無表情で過ごしているであろうと思うほど、こいつは表情がない。
授業中はいつもこんな顔してるよな……。



「じょ、冗談も大概に……」

「冗談でもありません」



おいおい……。
なんだってこんなことに?



「先生のことが好きです。マジですから」



マジの方がまずいんですけど……。
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