Short
□みんなのメリークリスマス
2ページ/6ページ
「クリスマスプレゼント?」
僕の前の椅子に座り、机に肘をついた状態で、クラスメイトである槙彦こと槙くんは、不思議そうに僕を見返した。
その机の横の机に座るのは、こちらも同じクラスメイトの凪。
凪は無表情で(いつも無表情だけど)、あさっての方向を見た。
「いとこのお兄さんにあげようと思って」
「あぁ、拓が懐きまくってる“あの”いとこな」
槙くんは少し含みのある言い方をした。
辰巳さんと槙くんや凪を会わせたことはない。
でも無意識のうちに僕は辰巳さんの話をしてるらしく、槙くん曰く、
「知ってる奴みたい」
という感想に至ったようだった。
「槙くんだって、お兄さんに渡すんでしょ?えっと……」
「……幹彦さん」
「そうそう、幹彦先輩!」
「幹は関係ねぇだろっ」
槙くんは少し不機嫌そうに言ったが、それが照れ隠しということは、僕と凪の間では周知の事実。
僕はくすりと笑って、次に凪を見た。
「凪は誰かにあげるの?」
凪はまたあさっての方向を向いた。
僕も槙くんも不思議そうにその様子を見つめていると、凪はぼそっと口を開いた。
「……あげたい」
あげたい?
「あげたいんなら、あげれば?」
槙くんが首を傾げながら言う。
まったくその通りだと、僕も二、三度頷いた。
「……片想いでも?」
「「か、片想い!?」」
初耳だった。
凪は今まで一度だって、そんなことは言わなかった。
凪ってそーゆーこと興味ないのかと思ってた……。
いっつも告白断ってたし。
「凪に好きな人がいるなんて知らなかった……」
「……聞かれなかったから」
「まぁ……、確かに」
決めつけてたのか、僕たちは。
凪にはいないだろうって。
「じゃあ、みんなあげたい人はいるんだね」
「別に俺は……」
「何あげたらいいかなぁ」
「……拓は聞けばいいんじゃないか?」
「聞いたんだけどね、はぐらかされちゃうんだよ」
「俺の話を聞けよっ」
こうやってみんなで話してるのは好き。
楽しいから。
でも、その話題の対象が辰巳さんだから。
もっともっと楽しいんだ。
そんな僕の気持ちは、辰巳さんに伝わっているのかな?
伝わればいい。
この気持ちの、ほんの触りだけでもいいから。
伝われ。
まぁ欲を言えば、ぜんぶ。