本編
□二人の距離
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屡架、亜衣利と別れて数時間経った道場では、まだ熱心に素振りを続けている小夏がいた。
「……」
「一人で稽古か?」
「ッ…!!」
小夏はそろそろ止めようかと竹刀を下ろす。同時に道場へと稽古をしに来た斎藤に声をかけられる。斎藤の気配に気が付かなかった小夏は、ビクッとして竹刀を落としてしまった。慌ててその竹刀を拾い、気をとり直して平然として話し掛ける。
「どうしたんですか?」
「稽古をしに来た。」
「そうですか…じゃあ、私は出ていきます…」
「いや、いい。好きなだけすればいい」
「…」
元々止めようかと思っていたがそう言われれば帰るに帰れず、また稽古を始める。
「…あの」
数分稽古をしていると小夏は斎藤に近づき控えめに声をかける。声をかけられると思っていなかった斎藤は直ぐに稽古を止め、小夏の方を向く。
「どうした?」
「…もしお時間があるなら、稽古をつけていただけませんか?」
「構わないが…」
「ありがとうございます」
つけてもらえると思わず、了解を得れば礼を言って頭を下げる。そして、稽古をつける。
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