本編
□素直な気持ち
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「もう、はーくん何て知らないッ!!」
「待て、小夏ッ!!」
とある日の昼下がり。二人の男女の罵声が屯所内に響いた。それと同時に、女が屯所を飛び出していく。その人物は綾川小夏。と言うことは相手は勿論、斎藤一だ。
「何やってんだ、お前ら…」
「副長…それが、」
「一くんが綾川を可愛がってやらないから、拗ねたんですよ〜」
「そう言うことか…なら、自業自得だな…頑張れ、斎藤。」
事の元凶、それは仕事が忙しい斎藤が充分に小夏といられなかったことにある。毎日のように"忙しい"の一言で済ませる斎藤に、今日は痺れを切らしてしまった。その結果、喧嘩になった。
こんな体験をしたことがない斎藤は、どうしたら良いのか分からず考える。そんな時、ため息をひとつつき沖田が声を発する。
「こう言うときはね…追いかけるんだよ?そして、優しく抱きしめて謝るの…分かった?」
「…分かった…行ってくる。」
斎藤は急いで屯所を後にした。
「世話のやけるやつだ…」
「ですね。」
一方、小夏とはいうと…
「貴女が小夏ですか?」
変な男に捕まっていた。自分は知らないのに相手は自分の事を知っているのに疑問を抱く。
「何で私の名前を?」
「ふふ、貴方の婚約者だからですよ…Lady…」
「……(南蛮人かよ…父様殺す…)」
目の前に現れた婚約者と名乗る南蛮人を見て小夏はあまり驚きもせず、現状を把握する。暫しの沈黙の後、小夏は一歩相手に近付きため息をつく。
「はぁ〜、父様から聞かなかった?私、貴方とは婚約しない…」
「Why?」
「……日本語喋れ」
「Sorry…何故です?私(ワタクシ)は貴女の父上様に言われて遥か遠くの地から此処まで来たのですよ?」
「日本語うま…何故って言われてもなぁ〜貴方の事知らないし…私……」
「小夏ッ!!」
小夏は断る理由を言おうとしたが恥ずかしいがため、言うのを止めた。それと同時に、遠くの方から自分の名前を呼ぶのが聞こえ、声の発生場所を見る。するとそこには、息を切らした斎藤がいた。
「はーくん…」
「…?誰です?」
「…お前こそ誰なんだ?」
「私は小夏の婚約者で、ロベルトと申します。」
「ッ!!」
それを聞いた途端、斎藤は顔色を変えた。
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