本編
□勘違い?
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「やっと、巡察終わった〜亜衣利ちゃん隣にいないとつまんないんだよなぁ〜」
巡察が終わって、屯所に戻ってきた沖田は急いで亜衣利の部屋に向かった。しかし、部屋には亜衣利の姿は無く、小夏や屡架の部屋にもいない。何処に行ったのか分からず、屯所をくまなく探し始める。
何処を探してもいなくて、悪い予感が頭に過る。もし、浪士に拐われたりしたら。なんて、考えれば沖田は、急いで探しに行こうとする。と、丁度その時、入口の方でいつもの三人の声が聞こえた。安心して、沖田が近付こうとしたが、話の内容が可笑しいのに気がつく。
「ねぇ〜結局、皆殺し?半殺し?」
「にゃー…半殺し?」
「嫌よ、皆殺しにしましょう?」
「屡架は皆殺し希望?私は半殺しが良いよ〜」
「うにゃ、両方にしよう♪」
柱の影から聞いていた沖田は、わなわなと体を震わせる。愛しい亜衣利の口から"半殺し"だの"皆殺し"だの言っていれば、当たり前だ。もう、いてもたってもいられなくなった沖田は、三人に近付いていく。そして、後ろから亜衣利に抱きつく。
「にゃーーーーーッ!!」
「あ亜衣利ッ!!って…総司じゃん…何してんの?」
「…亜衣利、ダメだよ?君の口からそんなはしたない言葉出しちゃ。気にくわない奴がいるなら、僕が殺ってあげるから…」
「総ちゃん?何のこと?」
「だって、今、半殺しとか皆殺しとか、言ってたでしょ?」
「…あははは、総司馬鹿じゃんッ!!」
「あらあら、沖田さん勘違いしてますよ?」
いきなり爆笑する小夏と口許を押さえ微笑んでいる屡架、にこにこ笑ってる亜衣利、何がなんだか分からず、沖田は首を傾げる。そんな沖田に亜衣利は優しく種明かしをする。
「総ちゃん、"皆殺し"はこし餡"半殺し"はつぶ餡、さて何でしょう?」
「…甘味作ろうとしてるの?」
「うん♪ぼた餅。もぅ、御彼岸だし…作ろうかなって。」
「そっか。良かった〜…」
やっと意味の分かった沖田は安心したように亜衣利を優しく抱きしめる。亜衣利もきゅぅって"心配してくれてありがとう"と言って抱きしめ返す。
「そろそろ、作るよ〜」
「急がないと、日が暮れちゃうわ?」
「うん♪じゃあ、総ちゃん、楽しみにしててね。」
「気をつけてね。」
亜衣利はパタパタと足を鳴らし、楽しそうに台所に向かって行った。
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