本編
□二人の距離
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「そろそろ、終わりにしよう…」
「あ、はい。」
斎藤の声で道場の外を見るといつの間にか日が傾き夕方になっていた。
「今日はありがとうございました。」
「本当に俺の稽古で良かったのか?」
「えぇ。斎藤さん強そうだからいいんです。」
「副長の方が強いと思うが…」
「私、あの人嫌いですから。だから…斎藤さんが良かったんです。それに…」
その続きを言うのを躊躇っている小夏の顔を覗き込む。そうされれば、顔を反らし斎藤に背を向ける。
「…今朝…蒲団で寝ていなかったので…悪いことしたなぁと…」
「謝ることではない…今日からは別の部屋に出来るよう、副長に頼んでみる。」
「…一緒の部屋じゃダメですか?」
「ッ…!!」
小夏からそんな言葉が出ると思わず、斎藤は動揺してしまい言葉を直ぐに返せなかった。
「…わかった…もう一組蒲団を用意しておく。」
「ありがとうございます。じゃあ、私母屋に戻りますね。」
小夏は一礼をして、滅多に見せない笑顔を斎藤に見せ、去っていく。小夏の笑顔に斎藤は胸の辺りの違和感をいだく。その違和感を不思議に思いながら、自分も道場を後にする。
「この違和感は何だ?」
この気持ちはいつになったら気付くんだろう…
→続く