本編
□真実
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「すいません…失礼しますッ!!」
「る屡架ッ!!」
屡架はいきなり立ち上がり、土方の顔を見ずにその場を立ち去って行く。亜衣利はそんな屡架を追いかける。残された沖田は襖に軽く寄りかかりため息をつき、土方と隣にいる女を見る。
「はぁ、これから亜衣利と遊ぶ予定だったのに…土方さん、そろそろ、その子離してあげたらどうです?」
「それもそうだな…」
沖田に言われるがまま、女の口元を覆っていた手を離してやる。そうすれば、女は脱兎のごとく部屋から出ようとする。しかし、それは沖田に阻止された。女は沖田を睨み付ける。
「通せ…」
「総司、そいつを通すな。」
「分かってますよ…」
「何故、止める…土方…後少しなのに…」
「あのなぁ、お前は邪魔なんだよ…俺と屡架の関係にな…」
「何か理由がありそうですね…」
「あぁ…」
「屡架、待ってッ!!」
亜衣利の声すら聞こえないのか屡架は、走って逃げていく。疲れてきた亜衣利は、必死に屡架の腕を掴み、走っているのを止める。止まった屡架はその場にへたり込み、泣き出す。亜衣利はあわあわしながら、その涙を止めようとする。
「屡架…」
「ふっ…ひっく…」
「どうしよう…」
「なぁーにしてるの…って、屡架ぁッ!?どうしたのさ…」
「…あのね…」
ちょうどそこを通り掛かった小夏と斎藤は屡架が珍しく泣いているのに驚いた。そんな小夏に亜衣利は丁寧に事の事情を話す。
「はぁ〜ッ!!あんのバカ土方ッ!!あんだけ屡架泣かすなって言ったのにッ!!許さんッ!!」
「落ち着け小夏…」
「落ち着いてられるかッ!!私たちの大事な屡架を泣かせたんだよ、はーくんッ!!」
「だが、冷静にまず神咲の話を聞こう……」
「…わかった。屡架…大丈夫?」
話を詳しく聞いた小夏は怒り、土方を殴りに行こうとしたが斎藤に止められた。斎藤の言葉に冷静さを取り戻し、改めて屡架に話しかける。屡架は涙を必死に止めながら、小さく頷く。
「大丈夫…分かってたことだから…土方さんは私なんかより、他にも好きな人いるんだなって…薄々感じてたから…」
「それは違う…」
負の方を考えてしまっている屡架にどうしたら良いのか分からずにいた小夏と亜衣利を他所に斎藤が話し掛けた。
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