本編

□鬼
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「ここがそうだよ。誰かに用でもあるの?」


「えぇ…少し…」


「ですが…今は皆さん、出掛けていて…」


「あら…残念…」



女はそう小さく呟く。そして、屯所をジッと見つめる。そんな雰囲気に耐えられなくなったのか亜衣利が話し始める。



「でもでも、上がったらいいよ〜」


「亜衣利っ!!土方に怒られるよっ!!」


「大丈夫にゃ。女の子だし、こっちには屡架がいるもんっ!!」


「私、そこまで役に立たないわよ?」


『役に立ちますっ!!』


「まぁ、分かったわ…あの、お名前聞いてもよろしいですか?」


「申し遅れました。華那(かな)と申します。」


「華那さんですね。」


「良い名前だにゃ〜それに、キラキラしてるっ!!」



亜衣利がそう言うと、華那は何がキラキラなのか分からず首を傾げる。



「髪の事だと思う。」


「あぁ…これ…」



華那は自分の髪を軽く触り、眺め始める。キラキラの意味は、華那の髪が金髪だからだ。



「瞳も素敵な朱色ですね…」


「生まれつきなんです。」


「羨ましいにゃ〜」


「亜衣利は普通が一番だから……」


「そうよ。今のままで可愛いのだから、そのままでいいのよ?」



華那は亜衣利の頬を包み込むように触れる。すると、亜衣利の瞳が潤み始め、泣き始める。そんな亜衣利を見て、華那はどうしたら良いか分からず、困惑する。



「えっ!?ど、どうしましょう……」


「あぁ…大丈夫、大丈夫。いつものことだから。」


「それなら、良いのだけれど……」


「華那。」



華那が亜衣利の涙を拭っていると、華那の名を呼ぶ声がする。その声の先を見ると、西洋の服を着た男が立っていた。



「何でいるの?」


「迎えに来たに決まっているだろう。」


「めんどくさい男……」


「誰にゃ?」


「……お前こそ誰だ。」



亜衣利が男の顔を見ながら問うと、その男はギロリと睨み付ける。あまりの恐さに亜衣利は小夏の後ろに隠れる。小夏は亜衣利を庇うようにし、睨み返す。



「いきなり現れて、先に名乗るのが礼儀じゃないの?」


「何だと……」


「千景、止めなさい…」


「……」



華那の一言で千景と呼ばれる男の行動が止まる。













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