オリジナルBL小説

華道家の花嫁候補(?)SSのみ掲載
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 宗汰は華道のみならず、茶道や書道も習わされている。次期家元予定だからというわけではなく、宗一朗たちも同じように稽古はさせられた。

 礼儀作法に茶道は欠かせないし、なんらかの書面を毛筆で書くときもあるからだ。

「遅くにできた子だからか、これが可愛くって可愛くってな。どうも甘やかしてしまった」

 宗汰とは従兄弟同士だ。それはよく知っている。
 とにかく小さいころから腕白で、甘えん坊で、気が強い。

「他の稽古も似たようなものでな」

 親として悩んでいるというわけか。

「そこで宗一朗。おまえ、しばらく宗汰を預かってくれないか?」
「宗汰を?」

 親の手に負えないから、他の身内に任せるつもりか。

「高校に入れば落ち着くかと思えば相変わらず。儂のところにいれば甘えたい放題になってしまう。ここは親元から離して修行させたほうがいいと、咲子とも相談してな」

 次期家元予定の子を育てろと言われても、失敗すれば誰が責任を取るのだ。

 絶対に断らなければと困惑していると、いきなり襖が大きな音を立てて開いた。

「親父ぃ! 俺を宗一朗ンところに行かせるって、マジかよ?」

 噂をすれば、なんとやら。
 見かけだけなら愛くるしい少年なのだが、中身はやんちゃ坊主の宗汰だった。

 いまは夏休みである。学生服を着ているところを見ると、今日は登校日だったのだろう。帰宅したばかりのようだ。

「いま咲姉から聞いた。どういうことだよ?」

 咲子は結婚しているが、家元の仕事を手伝っているからか、日中のほとんどは実家か本部にいる。

「宗汰さん。お父さまに向かって、なんですか。その言葉づかいは」

 宗汰のあとから、咲子も客間へと入ってきた。

 咲子は宗一朗より一つ下だ。

 宗汰が生まれるまでは、本人も次期家元になるのだとばかり思い込んで稽古にも励んでいた。が、その矢先にコロッと生まれたのが宗汰だった。
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