いろいろ

□逸脱した幸福論
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高杉は基本的に休日は自分の家でごろごろしているか俺の家でごろごろしているかの二択しかない。しかも俺達は平日でも休日でも一緒にいることが多いので前者な今日、俺は高杉の家のインターフォンを押していた。因みに、アポは取っていない。最初のほうこそきちんと約束していたものの、もう定番と成り果ててしまった為お互いいちいち約束するのが面倒になってしまったのだ。アポを取らない事を咎められたことはない。それほど俺は高杉の生活の中にのめり込んでいるのだろうと、インターフォンを鳴らし高杉を待つ間だけと頬を緩ませた。

されどいつまで立っても高杉は出てこなかった。一分ほど待ち流石に怪訝に思い、もう一度インターフォンを押す。インターフォンが壊れて聞こえなかったのだろうか。高杉が留守という答えはハナから無かった。

だが、やはり高杉は出てこない。
依然静まり返ったままのドアの前、心なしか肌寒くなってきた。電話してみるか、とポケットに入ったままの愛用のガラケーを手に取る。何度か落として角が磨り減ったこいつもそろそろ買い替え時だ。あ、でもスマホ高ェんだよな。ボーっとしながら一番上に登録されている番号を押そうとしたその瞬間、聞きなれたメロディーが俺の携帯から鳴り響いた。電話だ。しかも、高杉から。ぴ、とボタンを一つ押し、電話に出る。

「あ、もしもし高杉? 俺今オメェん家の前に居るんだけど、インターフォン壊れてたりする?」

『壊れてねェ、そんなことより……』

此処でなにやら電話の向こうの高杉のやけに切羽詰った声の背後から、ガシャンと何かが割れる音が響いた。

『――ッ、ああっ、クソッ!話は後だ。鍵は開いてるから、勝手に入って来い!』

プツン。ツー。ツー。ツー。

「……切れた」

小さな液晶画面に表示されているのは通話時間で、そこから流れるどこか虚しい機械音が寒空の下俺の耳に木霊する。とにかく、高杉の身に何か起こっているのだろう。

酒に酔ったアイツにそっくりで美人なアイツの姉貴でも暴れてんのかな、とどこか人事に考えて高杉の家のドアに手を掛けた。


すごい轟音。



「あーッ、銀八やっと来たか遅ェんだよテメェ!」

すごい轟音の犯人の泣き叫ぶ赤ん坊を抱いた高杉が黒いエプロンをしてそこにたたずんでいた。そのエプロンは片方の紐が高杉の肩からずり落ち、挙句の果て高杉は困り顔で、一瞬場違いにもエロスティックな方向に思考が行きかけた。

「……えっと、高杉ッ、ついに俺の子供を」



殴られた。







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