捧ぎ物

□人は忘れることで生きていけるとはかぎらない
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モテないモテないといっている万年金欠の銀髪天パの不本意ながら俺の恋人の男の下には存外女が沢山よってきて、しかもそれの殆どが別嬪である。

銀時の周りをうろうろしているメガネの忍者の別嬪は確実に銀時のことを好いているし、金髪の顔に傷のある吉原の女だって、銀時に事故とはいえ胸を揉まれたという情報が入っているし、銀時に気があるかもしれない。片目の背の小さい男の真似事をしている女だって、女っぽい服装をすれば普通に可愛いし、実は銀時を頼りにしていることも知っている。新八の姉の女だって、あの真選組の局長を腑抜けにしてしまうほどの別嬪だ。万事屋の下のスナックを営業しているババァだって、昔はかなりの別嬪だったらしい。

運がいいのか元々そういう星の元に生まれたのか、あいつはなんだかんだ言って結構女には不自由はしていなかった。
それはあいつの容姿もだが、あいつの元々なにをせずとも人を自然と寄せ付けるカリスマ性だとか決して救世主のように綺麗ではなく、どちらかといえば悪役に近いようなぐちゃぐちゃとした人間らしい胸の内を隠そうとせずさらけ出しているところとかがワイルドでいい、と女を寄せ付けるのだろう。

それと、あいつの元には女も寄るが、男もよってくるのだ。

そのノリの良い性格と、強く、気取らず、そして馬鹿なところが好かれるのだろう。

実際、俺もあいつのそういうところに好かれた。

だから、今回の事件は予想していたのだ。

だけども。



「・・・・・・。」

「・・・あの、本当にすみません。」



俺の目の前で土下座している男は、もはや若干涙目で俺を見つめている。
何も言わず圧力をかける俺に押しつぶされそうになり、なにか言ってよ・・・とか小さい声で呟いている。
顔を少し青ざめ、漫画のように表現するなら正に顔に縦線が入っている状況だ。

こいつに何があったかは俺はすべて把握している。それがハメられた為ということも。
鬼兵隊の兵力と情報力を駆使してすべてを知った俺はすぐさま京から江戸へ脚を向けた。

こいつはハメられたのだ。
だけどそれを仕方ない、と解釈するには、俺は些か心が狭かった。


「あのね・・・。俺はハメられたワケであって・・・。」

必死に言い訳をする奴ほど見苦しいものはない。
だけど顔のいいこいつがすることによって、何故だか俺が罪悪感を背負ってしまう。
たとえるなら、必死に謝る小動物をいまだ怒っている人間のような。

そこまで想像して、急に噴出してしまいそうになった。
コイツは小動物なんて器じゃない。
本気になれば誰でもどうにでもできる鬼だ。

だがこいつはその鬼をどうにか必死に隠そうとしている。
実際隠せずにその片鱗がちらほらと見え隠れしているので、その正体をすべて見たくてよってくる者もいるのだろう。
なぜ鬼を隠そうとしているのかは謎だが、俺の憶測からして多分そのほうが平和にくらせるからという簡単な理由だろう。
それが逆に面倒ごとを引き寄せているともしらずに。

「・・・あの、」

たらたらと汗を流し必死にキョロキョロと視線を泳がせている哀れなこいつはもはや泣きそうだ。
そこまで俺は怖い顔をしているのだろうか。
そりゃあ多少は圧力をかけているが、別に怖い顔はしていないし、別に口元に笑いを浮かべてもいない。
なのに何故こいつはこんなに焦っているのだろうか?
何故、何故、何故、



「たかすぎ、」

銀時の手が俺の目元に迫ってきた。
その手は暖かく、俺の目元を優しく拭う。


「頼むから泣かないでよ」

離れたその手には、水分が付着していた。

その事実を知ったとたん銀時を力いっぱい突き飛ばし、自分の目元を着物の袖でごしごしと拭った。
なんてことだ。俺は自分も知らず知らずのうちに泣いていたというのか。
なんという失態だ。最悪だ。


それになによりも最悪なのは俺が全力で突き飛ばしたのにも関わらず少し尻餅をついただけのこの男だ。銀時だ。
俺がいるにも関わらず、ハメられたとはいえ、5人の女と1人の男と一時期一緒に同棲していたこの腐れ男が原因だ。
女にモテるこいつが悪い。性格の良いこいつが悪い。俺をもっと愛してくれないこいつが悪い。

「・・・帰る」

少し落ち着こう。
京に帰れば落ち着くはずだ。

そう思い立ち上がったのにしかし、其れはできなかった。

腕を勢いよく引っ張られ体が宙に浮いたかと思うと、次の瞬間にはこいつの胸の中だった。
とくん、とくんとゆっくりなこいつの心臓に対して、俺の心臓は時が立つにつれどんどんと早鐘を打つ。

「ごめんな。不安にさせて。」

低い声が直接耳元に伝わったせいで体に甘い痺れが走った。
自分の声が甘く部屋に響いた。
子供がいなくてよかった、と密かに思う。

「俺、お前のことすごい愛してるから」

浮ついた台詞はこいつにはもったいない。
だけど、少しくらいなら、聞いてもいいかもしれない。

「だから、教えてあげる」



















こいつは女にモテる。
それは知っていたことだが、其れにいちいち嫉妬していたら駄目になるということが今回の事でわかった。
主に俺の腰とか腰とか腰とかがだ。
もう20代後半の癖して体力だけはまだまだ有り余っているこいつの全力を受け止めるだけの体力が残念ながら俺には残っていない。


だからだ。

「大丈夫?高杉」

「大丈夫じゃねぇから隣にいろ」

「わかった」


俺をあんまり不安にさせるなよ。






おわり

やっと書けたぞーーーーー!!!

本当にずっとお待ちさせてしまい申し訳ありませんでした。
びっくりだよな。4ヶ月以上も待たせたんだぜ・・・?

なんだか期待にお答えできたか激しく不安ですが、いいでしょうか?

なにはともあれ、リクエストありがとうございました!

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